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尊厳の火
風の吹き上げる音はもはや轟音というまでに鳴り響いていた。荒れ狂う…これは嵐か。ナナは目を開いた。足は、地に着いている。そう、ここは塔の中、偽りなき現実の回廊。シェマグリグは横に立っている。その胸元から力なく落とされた白い腕。イベールは意識を失っていた。それとも眠っているのか?その白い顔はむしろ死んでいるようにさえ見える。ナナ立ち上がり、イベールの肩をそっと揺さぶった。
「イベール様…?」
イベールは瞼を振るわせ、シェマグリグの胸に頬を寄せ、前方を指差した。
「…行こう」
起きる意思を見せないイベールの様子に、シェマグリグはナナに向って言った。並んで歩き始めた筈が、気づけばナナは後ろを歩いている。無心に爪を噛みながら…。そんなナナを気にはしつつも、シェマグリグは何も言わなかった。何処か気詰まりな道行。やっと階段に辿り付く。階上に至って、初めてイベールは自ら立ち、腕輪を扉に押し付ける。微かに視線をナナに向け、不可解な笑みを浮かべて。そして四番目の扉も開かれた…
…ナナの、この息苦しくも甘い想いを溶かすように…
「イベール様…?」
イベールは瞼を振るわせ、シェマグリグの胸に頬を寄せ、前方を指差した。
「…行こう」
起きる意思を見せないイベールの様子に、シェマグリグはナナに向って言った。並んで歩き始めた筈が、気づけばナナは後ろを歩いている。無心に爪を噛みながら…。そんなナナを気にはしつつも、シェマグリグは何も言わなかった。何処か気詰まりな道行。やっと階段に辿り付く。階上に至って、初めてイベールは自ら立ち、腕輪を扉に押し付ける。微かに視線をナナに向け、不可解な笑みを浮かべて。そして四番目の扉も開かれた…
…ナナの、この息苦しくも甘い想いを溶かすように…
更新日:2022-12-31 19:16:44