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真夜中の訪問

 ユースとレイクは病棟を抜け出し、真夜中の庭を歩いて生活棟までやってきた。
 レイクは明かりが見えた事と、大声を出した事で元気になってきて、歩く速度も速くなった。



 やがて二人はもっと建物に近づいてきた。
 レイクはもう一度チョースを呼ぼうと、上を向いて大声を出そうとした。
 だがユースはそれをやめさせて、見当をつけた部屋の下まで来ると、小石をガラスに投げつけてみた。
 面白がってレイクが真似しようとするのを止めながら、彼はもう二、三度それをやった。


 するとうまい具合に、チョースが部屋の窓から顔を覗かせた。
 窓にパラパラと音がしたので、何となく外を見に来たのだった。そして下の方の暗がりに白っぽい人影がいるのを見て、驚いて口をあんぐり開けた。
 部屋の窓を一杯に開けて身を乗り出すと、やはりそこにいたのはユースだった。
 こんな夜中だというのに、相手は何でもなさそうな口調で彼に呼びかけてきた。

ユ「管理人に見つからないよう上がるには、どうしたらいい?」
チ「お前───そっちにいるのはレイクか?なぜ電話しなかった。呼べばいいだろうに」
ユ「持ってなかった。病室には何も置かれてなかったんだ」
チ「そいつが入院を嫌がったのか?何で外に出てるんだ」
ユ「退屈だったから」
チ「そいつは肺炎を起こしかけてたんだぞ。お前だって‥馬鹿だな」
ユ「いいじゃないか。寒いし、あんまり遊べる場所もないから、君の所に転がり込む事にした。出来れば上着か毛布を放ってくれないか?それにあったら靴も」

 チョースは一度部屋を振り向き、もう一度ユースの顔を見た。そして言葉も返せず、再び部屋の中へ姿を消した。




 次に出てきた時、彼は腕に二人分のコートを抱えていた。それは昼間にもらった軍用のジャンパーで、それを窓から放り投げた。
 ユースは服を拾いながら、相手にさらに要求した。
ユ「レイクは犬のフンか何かを踏んだんだ。汚いから、足を布でくるんで上げるよ。何かないか?」
チ「コートの中にハンカチが入ってるよ。それで何とかしろ。
 しかし‥どうやって病室からそいつを出したんだ?今頃、探されてるんじゃないのか。こっちの部屋にだって入れるのは大変だぞ。工作するにも、パソコン一つしか持ってないんだ」

更新日:2022-12-22 18:51:13

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