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第1章はないけどチ○ポはあるよ^^^^^^^^

これは我々が住む現代とは違う次元のお話。
その世界にはとても勇敢で優しい戦士がいました。
人のためならば誰よりも先に足を運んでことをなし、悩んでる人あらば誰よりも先に手を伸ばし、困っている人あらば誰よりも自分を犠牲にすることを選ぶ。
そんな勇敢でたくましくて優しくて、そしてひどく内省的な戦士でした。

ある日のこと。
戦士がとある村へ訪れると、村人たちが何やら揉めていました。
「どうしたんだいったい」と彼が声をかけると、村人たちは戦士に微笑みを少し見せてから、すぐ困った顔になりました。
なんと、どうやらその問題というのが中々難しいものなのです。
Aという村人とBという村人。この二人はどっちもどっちと取れるような、そんな喧嘩をしていたのです。
しかし、AもBも昔なじみでありながら頑固ですから、当然どちらも引き下がりません。いかに自分が被害者なのかを訴えます。

戦士は困ってしまいました。
彼の勇猛な腕にかかれば、いかなる木でもモンスターでも倒せます。必要とあらば洞窟だって拳で掘り出し、水と食料が欲しければ飛んで持ってきます。
しかし、人間の問題だけにはいつも悩まされました。そして、その度に戦士は目を背け、唯一解決できないことと苦手を決めておりました。
ただ、今日の村人たちは面白おかしくAとBの喧嘩をはやし立て、しかも、たまたま訪れた戦士が来たものですから、余計に高ぶっています。

やがて、見物していた村人が、戦士にこう言いました。
「こいつらの喧嘩をどうにかおさめてくれないか」と。

戦士は困ったように眉を下げ、言葉尻を濁しました。
やがて苦しそうにうなり声をあげると、ようやく「一晩待ってほしい」と言いました。
この返事にAとBは呆れてしまいます。しかし、村人たちは大喜びです。
なにせ、あの勇敢で勇猛で優しい戦士である彼からの返答です。当然、期待しないわけにはいきません。
戦士は申し訳なさそうにみんなに一礼すると、一目散に飛び立ちました。

戦士は山の頂上にたどり着きました。
そう、ひどく内省的な性格を持つ彼にとって、この山の頂上は静かに考えられる唯一の場所なのです。
戦士はさきほどの村人の喧嘩を思い出して、目を閉じ、そして頭の中で事件を整理しようと深く息をします。
喧嘩はすごく個人的な出来事であります。
とはいえ、その件かを深く見ていくと、様々な要因が思いついてきます。

片方を取れば片方がなくなる時、果たしてどちらが正解なのか。
もし、その片方それぞれに等しいほどの価値があればどうすればいいのか。
例え選んだとしても対して変わりようがないことでも、戦士である自分の立場を思えば勝手なことは言えません。
戦士は頭に「正義は人それぞれ」という謎の言葉が思い浮かびました。しかし、こんな言葉を言っては何も解決にはなりません。
どちらかを悪く言うべきなのか。否、どちらも悪いというべきか。あるいはどちらもその精神を奨励するのか。
戦士は深く悩みます。

考えてみれば、それは、果たして本当に戦士の仕事であったのか。
悩んでいる戦士が哀れに見えて、雲の上から仙人らしき人物がやってきました。

「これ、戦士よ。また悩んでおるのか」

戦士は突然現れた仙人に驚きつつも、すぐに頭をぺこりと下げます。
そして、戦士はカクカクシカジカと事の経緯を語りました。
「やれやれ。お前ほどの戦士が、たかが一介の村人の意見程度で悩むなどと……情けない」
しかし、戦士はその言葉には安易に飲めません。人好きである彼にとって、そう簡単に流せるようなことではないのです。
仙人はどういう人物なのか、戦士にもよくわかっていません。しかし、仙人は悩める戦士を見ては常に助言を繰り返していました。
だから、戦士も仙人にそうした期待をこめてしまいます。

仙人は言いました。
「お前ほどの有能な戦士がくだらぬことに時間を使うとはなんたることじゃ。本当の優しさなどというのは存在するわけがなかろうに。時間を有効に使え。時間を」
仙人はさらに続けます。
「本当に優しかったとして、今、こうして悩んでることに何の価値がある。悩みなど無価値だと知れ。下界の人間どもはサルに等しいのだから、神に近いお前がノロノロしてはいかんだろうに」
戦士の悩みは深くなります。
「お前が優しくありたいのならば、もっと簡単な方法が身近にある。お前の優しさを守る方法が、なぁ」

更新日:2022-11-30 19:45:57

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