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ちなみに私はそんなにパンは好きではありません。知ってた?

~数時間後~

「やっとできたか」

サムおじさんはにんまりとしています。
今日こそ悪のダイキンマンを攻撃し、かのダイキンマンの手下どもを労働力にさせ、そのあぶく銭で一国を築く時です。

「さぁ、行ってくるんだアルパンマン。はい日本刀」
「ご心配には及びませんよサムおじさん。私の指で十分でございます」
「そうだったね。ところで、まだなにか言いたいことがあるかい?」

『アルパンマン』は不思議そうに首を傾げます。

「何もございません」
「よしよし。”いい子”だ」
「そうだ。私には感想はない。感情もない。無駄なモノは一切必要ない。私にはいっさい必要ない」
「ふふ。それが当たり前なんだよ。不思議そうな顔をするな、気持ち悪い。いつまでも突っ立ってサボるな。さっさと行け」

アルパンマンを見送ると、今度は彼の戦友である『カルーパンマン』がやってきました。
全身ボロボロで、細菌やらコロナやらpm2.5やら政治に癒着する宗教団体やらがびっしりこびりついています。
サムおじさんはまたため息をつきました。

「やれやれ。またパンを作らないといけなくなるな」



サムおじさんがもう一度パン生地をこねると、また聞き覚えのある声が聞こえてきます。
まるで同じように、そのパン生地も光はじめ、言葉を……脳内に、心に語り掛けるように、弱々しい声が続きます。

(たす……けて……)

サムおじさんはもう驚きません。

「ふぅ。またかね」

サムおじさんは笑顔を浮かべながら、小さく舌打ちしました。

「こりゃまた質の悪い小麦だな。やっぱり安物はダメだねぇ」

けれど、それはひと手間が加わっただけ。
結局やることは一緒です。
小さなパンは所詮、小さなパン。
えらいのは常に作った者であり、立場が上の者なのです。

これを見てるあなたの想いもみんなと一緒ではありません。
人それぞれの美しさ、みんなちがってみんないいの素晴らしさ。
まやかし言葉に踊らされ、気付けば孤独にされてる恐怖に、まだ誰も気づいていないようです。

「まぁ、使い捨てだから気にすることはないか。はっはっは!!!!!」

サムおじさんの笑い声が、誰もいない工場に響き渡りました。

ー完ー

更新日:2022-11-29 13:53:38

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