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戻る時が来たようだった。
いつまでも此処に居れない事はわかっている。
だが、時間が関係ないのならもう少し…と思ってしまう。
それ自体が、囚われつつあるということかも知れない。
「あまり長くいても良くないそうです。…ここの方が良くなってしまっては、と……」
気遣わしげな面持ちで、シアンがそう告げた。
「あぁ、分かってる。」
シアンが安堵した様子を見せる。
子供に気を遣わせてしまったか…。

「アイリスっ」
ティファンが近寄ってくる。
「これ…お土産っ!」
「土産…?」
持ち帰って良いものか戸惑っていると、ホルが笑顔で軽く頷いた。
どうやら問題は無いらしい。
ティファンから受け取ったそれは、それなりに分厚い本だった。
「帰ってから見てねっ!?」
「分かった。」
今見る時間も無さそうなので、特にそれに目を配らずに小脇に抱えた。

また…来ても良いものか。
どう2人に声を掛けて去れば良いのか…。
そもそも未だ去りたくも無いというのに、別れの言葉などは思い浮かばない。
まだ2人と話し足りない、まだ2人としていない事が……。
「おば様!」
シアンが袖を軽く引いた。
行動で示すのは、この子には珍しい。
ティファンの言っていた事が、この子の胸に響いたのだろう。
「あぁ…問題無い。」
「有りそうでしたよ。」
リュークが余計な事を言う。
「まぁ…もしそうなったら、ここを壊してでも出ていく積もりでしたが。」
「ヒィっ!」
「そ、それは…!」
「やめてくれ〜!」
空を飛ぶチビどもが、口々に喚き立てる。
「そうなったら、また創れば良いだけだ。…破壊も創造の理のうちだからな。」
ホルはそう言って、不思議そうに見上げたティファンの頭を撫でた。
「………あなたは、いつ、本気を出されるお積もりですか?」
含みある口調でリュークが尋ねる。
「ここの主はティファンだからなぁ…。」
「そうなのか⁈…てっきりホルだと……」
思わずそう言ってしまい、空気をぶち壊した事を後悔する。
ホルは話を逸らせて嬉しそうだが、リュークからは呆れた目で眺められてしまった。

更新日:2022-11-29 22:50:03

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