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リュークとシアンが連れ立って、別宅へ向かう。
オルスとレイチェルが待っているのだろう。
「老害の前でだけ猫被っとけ!」
「………あなたにもそれを望みたいものです。」
すかさず口を挟むリュークに、シアンが苦笑いを溢す。
こうして見ると、シアンはホルの仕草にも似ている処がある。
もしかすると、あれがシアンの地の姿なのだろうかと、ふと思った。
「…おば様、後程また伺います。」
「分かった。楽しみにしてるって、レイチェルに伝えておいてくれ。」
夕食に呼ばれるらしい。
それまで適当に時間を潰すか…。
ふと、小脇に抱えたままだった本の事を思い出す。
時間まで此れでも読むとするか。

庭に向かい、適当に腰掛けるに良さそうな場所を見繕う。
何気なく、頁を捲る。
随分細かい字で敷き詰めるかの様に書かれており、読み切るまでには時間がかかりそうだった。
更にパラパラと頁を捲っていく。
………ん?
これは…!
慌てて本の表題を確認し、全く目もくれなかった事を軽く後悔する。
あぁ…だが、それで良かったのか。
『帰ってから見てね』と、確かに彼女は言っていたのだから……。
頁を捲る。
見慣れた名前を確認する。
更に捲る。
今度も見慣れた……アイツの名前を見付ける。
…狭間の塔だった場所は、単なる屋敷へと変わっていた。
別の次元に通じる扉も無い。
仕方ない。
…諦めつつも、それに安堵を覚える自分も居た。
もう、行けはしない。
もう……会えはしないのだから。
「ここに…いるのか……」
更に捲った頁では、赤毛の魔女を口説く、馬鹿な剣士が描かれていた。
「………帰ってから…で、良かったなぁ…」
単に囚われる云々だけで無く、今の私のこんな顔をアイツらに見せたくは無かった。
「どれだけ掛かるんだ…」
その分厚さを、改めて確かめる。
全て読み終わるまで、幾日掛かるかわからなかった。
取り敢えず最初から、今度は丁寧に読み進めていく。
バカみたいに元気なチビ助に笑みが溢れ…不意に文字が滲んだ。

更新日:2022-11-30 23:34:30

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