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doré⑵

「…その方が、この子らも動きやすそうだ。」
ホルが手を翳すと、幼子が1人その手の平に乗った。
この幼子達は、今の姿でない状態で、幾度か見かけた事がある。
狭間に関係し、どうやら狭間の管理に関わってはいるようではあったが、当時は巧みにその存在がぼやかされており、一見何処にでも居る、取るに足らないものであるかの様にしか感じられなかった。
だが…現状においては、狭間の隅々までこの子らの痕跡を読み取れる。
狭間の、何かしらの鍵である事は間違いなさそうだった。
「あなたにも充分過ぎる程懐いている様に見えますが。」
ホルが軽く笑みを浮かべると、幼子は何処かに飛んで行った。
「やらされるのと自ら意欲を持ってやるんじゃ、結果に愛着を持てるかどうかが違ってくるからな。」
ホルがシアンに目を向け、軽く頷く。
「………はい。」
シアンも頷き返し、何か思いを巡らす。
「終えた後の…その続きですね。……実際は、終わらないから…。」
ホルは特にはそれに返さず、シアンもまた望んではいない様だった。
「…この子達は、何と呼べば良いのでしょう?」
幾らか嬉しそうに、幼子らを見回す。
「これには名前は無いなぁ。…名前を与えると、その音や意味合いで制限が生じるからな。」
シアンが目に見えて残念そうにする。
「次会う事があれば、シアンの好きに呼べば良いらしいぞ。」
「…構わないのですか!?」
幼子達が数名、シアンの頭上で旋回し始めた。
「シアンが呼ぶには問題無いらしい。ティファンは…こっち側のお母さんは、これを『妖精さん』って呼んでるが、特にそれで変化は生まれては無いな。」
この子らは、制限されるかどうか自らで選べる様だ。
ティファンはここの主の筈だが、主の発する言葉ですら…か。
それとも、ティファンがこれらに何も望んでいないからだろうか。
…両方共に有り得そうだ。
いずれにせよ、ここでは皆が自然体でいるのだろう。

更新日:2022-11-30 20:40:13

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