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第2話「リカ・エメラルド」
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西暦5993年トロロ星マガタ国難民キャンプ➖➖
十万ヘクタールを超える広大な平地にそれはつくられた。雲ひとつない青々した空のしたに背の低い芝が茂っていた。そしてその上に無数の白色の円錐状のテントや六角形の仮設住宅が規則正しくあたり一面に広がっていた。
そこには戦争や貧困、飢餓から母国を抜け出し、マガタ国にやってきた人々に溢れていた。
国籍は様々であり、彼らは安楽の地マガタの地で施しを受けながら生きていた。マガタ国のカオリ女王の政策により逃げ延びた彼らを保護し、巨額な費用をかけて仮設住宅をたて、彼らに住居を与えた。大工や魔導師、医師、薬剤師、看護師、弁護士といった専門家や彼らを補助するたくさんのボランティアが少なくとも数十万人程度が現地に出向き彼らの世話をしていた。
新マガタ国民として生きていけるために
そして今度は支える側として成長していくために
大自然の猛威や時の権力者によって生活が苦しくなり、生きていくのが精一杯な世の中になっていった。心のゆとりが消え、世の中はギクシャクしていった。治安が悪化し、強きものが弱きものをいたぶり、支配する秩序なき堕落した世界『ドラワールド』と化していった。
だがマガタ国はその中でもともに支え合い、助け合いながら人々が穏やかな心で暮らしていける最後の楽園として存在し続けた。
たくさんの人々が難民キャンプにはいる中、ひときわ目立つ少女がいた。エメラルド色の瞳とカールされたふわふわした髪、肌白に覆われた艶めかしい容貌をした少女リカ・エメラルド
おでこにはエメラルドのティアラを身に着けており、淡緑色と白色が入り混じった服と暗緑色のマントを着ていた。
エメラルド色の光が手のひらからほとばしり、ひとりの幼い少年の体に命の灯を蘇らせた。今にも消え入りそうなやせ細った少年がうっすらと目を開けた。そして天使のように微笑む少女リカをみつめた。そしてその少年の両親が涙を流しながら少女に手を合わせて何度も礼をした。彼らはワラをもつかむ思いで昨日マガタ国に到着したばかりだった。
「ほんとうにありがとうございました」
「いいえ、まだ油断は禁物です。かなり栄養失調が進んでいましたから一週間くらいは目を離さないでください」
リカは自分が調節した点滴を少年につないだ。
「体脂肪遠隔置換術!」
皮と骨から成り立ったような少年の体をそっと撫でるようにリカはその術式を施していった。
ブツブツブツブツという泡が立つような音がしてきた。
ほんの僅かながら少年の体に脂肪が蓄積していく。そしてリカの左手に握る人口の背脂がエメラルド色の光に照らされながらバターのように溶けていき、エメラルド色のホタルの光のごとく消えていった。
体脂肪遠隔置換術は強度を上げすぎると対象者の血液をドロドロにしてつまらせてしまうリスクがある。一方で強度を下げすぎると脂肪を挿入する部位を壊死させてしまう。
この少年に使う前に彼女は何週間も前からイメージトレーニングをして、市販の豚肉で実験を重ね、しまいには自分の体に実験した。おかげで自分自身も三キロほど太ってしまった。
西暦5993年トロロ星マガタ国難民キャンプ➖➖
十万ヘクタールを超える広大な平地にそれはつくられた。雲ひとつない青々した空のしたに背の低い芝が茂っていた。そしてその上に無数の白色の円錐状のテントや六角形の仮設住宅が規則正しくあたり一面に広がっていた。
そこには戦争や貧困、飢餓から母国を抜け出し、マガタ国にやってきた人々に溢れていた。
国籍は様々であり、彼らは安楽の地マガタの地で施しを受けながら生きていた。マガタ国のカオリ女王の政策により逃げ延びた彼らを保護し、巨額な費用をかけて仮設住宅をたて、彼らに住居を与えた。大工や魔導師、医師、薬剤師、看護師、弁護士といった専門家や彼らを補助するたくさんのボランティアが少なくとも数十万人程度が現地に出向き彼らの世話をしていた。
新マガタ国民として生きていけるために
そして今度は支える側として成長していくために
大自然の猛威や時の権力者によって生活が苦しくなり、生きていくのが精一杯な世の中になっていった。心のゆとりが消え、世の中はギクシャクしていった。治安が悪化し、強きものが弱きものをいたぶり、支配する秩序なき堕落した世界『ドラワールド』と化していった。
だがマガタ国はその中でもともに支え合い、助け合いながら人々が穏やかな心で暮らしていける最後の楽園として存在し続けた。
たくさんの人々が難民キャンプにはいる中、ひときわ目立つ少女がいた。エメラルド色の瞳とカールされたふわふわした髪、肌白に覆われた艶めかしい容貌をした少女リカ・エメラルド
おでこにはエメラルドのティアラを身に着けており、淡緑色と白色が入り混じった服と暗緑色のマントを着ていた。
エメラルド色の光が手のひらからほとばしり、ひとりの幼い少年の体に命の灯を蘇らせた。今にも消え入りそうなやせ細った少年がうっすらと目を開けた。そして天使のように微笑む少女リカをみつめた。そしてその少年の両親が涙を流しながら少女に手を合わせて何度も礼をした。彼らはワラをもつかむ思いで昨日マガタ国に到着したばかりだった。
「ほんとうにありがとうございました」
「いいえ、まだ油断は禁物です。かなり栄養失調が進んでいましたから一週間くらいは目を離さないでください」
リカは自分が調節した点滴を少年につないだ。
「体脂肪遠隔置換術!」
皮と骨から成り立ったような少年の体をそっと撫でるようにリカはその術式を施していった。
ブツブツブツブツという泡が立つような音がしてきた。
ほんの僅かながら少年の体に脂肪が蓄積していく。そしてリカの左手に握る人口の背脂がエメラルド色の光に照らされながらバターのように溶けていき、エメラルド色のホタルの光のごとく消えていった。
体脂肪遠隔置換術は強度を上げすぎると対象者の血液をドロドロにしてつまらせてしまうリスクがある。一方で強度を下げすぎると脂肪を挿入する部位を壊死させてしまう。
この少年に使う前に彼女は何週間も前からイメージトレーニングをして、市販の豚肉で実験を重ね、しまいには自分の体に実験した。おかげで自分自身も三キロほど太ってしまった。
更新日:2022-11-09 22:38:54