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「修学院」駅 E05

挿絵 619*465

 井上靖の小説に『本覚坊遺文』という小説がある。茶人千利休は秀吉から切腹を命じられたが、それは何故なのか。利休の愛弟子であった本覚坊の話からその糸口を探すストーリー。ストーリーはまたもやさておき、その本覚坊が遁世して住んでいる場所が修学院という設定になっていて、その本を読んだ時、長くこの地に住む者としては何やら嬉しかった記憶がある。
 小説世界だけではなく、映像の中にでも“地元”が登場するときも同じだ。痛ましい京都アニメーション放火殺人事件は未だ記憶に新しいが、その事件の後に京アニ制作の作品を何本か観てみた。その中のひとつ『けいおん!』は、僕には内容が眩しすぎて?つい早送りに。でも、一時停止する箇所がいくつかあった。それが「修学院駅」、おそらく「松ヶ崎橋」(橋の西北にあったアピカルイン松ヶ崎らしき建物は今は無いが)、そして叡電の車両、出町柳駅などの場面だった。制作者たちの思いの一端が感じられるカットでもあった。
 修学院駅そのものは、北山通が開ける以前はもう少しだけ北寄りにあったと思う。
 修学院というと、「修学院離宮」がすぐさま連想されるが、離宮は江戸時代初期の造営。地名としての修学院は、かつてこの地に天台宗の寺院「修学院(しゅがくいん)」があったからだという。だから、「修学院離宮」は正しくは「しゅがくいんりきゅう」と呼ばれている。離宮へは音羽川沿いの離宮道を東へと進む。比叡山の懐に進むという感じである。自由には入れない離宮だが、過去一度予約をとって拝観させてもらったことがある。どんな印象を受けたかさえ忘れた昔である。
≪写真:修学院駅≫

更新日:2022-11-04 19:04:59

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