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 僕が子供の頃、といっても僕はまだ十二歳だから子供なんだけど、七歳の誕生日の日に叔母さんからプレゼントにクマのぬいぐるみをもらった。

 叔母さんは外国では男の子にもクマのぬいぐるみをプレゼントするものなのよ、なんて言っていたけど、僕には素直に喜ぶことはできなかった。でも僕に兄弟はいなかったから、そのぬいぐるみは良い遊び相手になった。僕はそのぬいぐるみをくーちゃんと呼んで可愛がっていた。

 ある日のこと、小学校から帰ると僕はいつも通りに一人遊びに熱中していた。僕はうつ伏せになって組み立てたプラモデルのロボットを使い、想像でバトルを繰り広げる。そこで僕はくーちゃんを大魔王という設定にして、ロボットの前に坐らせてみた。ロボットの二倍ほどの大きさがあるくーちゃんはとても強そうに見える。僕はワクワクしてロボットで攻撃してみたり、逆にくーちゃんの攻撃をロボットに与えたりした。

 想像のバトルの中でロボットが窮地に追い込まれたあたりで僕はおもむろにくーちゃんの手の平のボタンを押してみた。

 くーちゃんには言葉を話す機能があって、手の平に内臓されたボタンを押すと、

「こんにちは。いい天気だね」

 や、

「ありがとう」

 とか、

「ねむくなっちゃった」

 など、簡単なセリフを幼い子供の声で喋った。

 僕はバトルにはふさわしくない言葉が出るだろうと思っていたけど、それでも自分以外の話し声が流れたら面白いような気がしたのだ。

更新日:2022-10-15 15:29:11

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