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04 ニコニコと友好的な顔つき
できた。モノホンの会心の出来だ。
3年間どうやってもまともに女の子を描けなかったんだから、ガッツポーズで喜ぶ位いいよね。
「見せて下さいっ!」
シノはデッサンを受け取ると、どれどれぇ拝見しますねぇと言いながらじっと見た。
最初は軽い感じで臨んでいたのに、直ぐさま姿勢を正すと、顔つきがみるみる真面目なものに変わって行く。
俯いたまま黙り込んでしまうと、しまいにはぽろりと大粒の涙をこぼすのである。
「どっ、どうしたのかな? もしかして感動しちゃったのかな?」
彼女は無言でオレに抱き付いて来た。鼻水混じりに嗚咽しながら両肩を震わせている。
オレは両肩をポンポンと軽く叩いてやると、彼女は素直そうにこくりと頷くのである。
「おい、シノッ! らしくないぞっ!」
ショウタが驚いて訊ねると、鼻を啜りつつ、クロッキーデッサンをビッと差し出した。
「一体どうしちゃったのぉっ? オワッ! ちゃんと描けてるじゃんっ!」
ショウタのクロッキーを持つ手が震えている。
「あぁ。何か描けた」
ホンと、この苦労が一体何だったのかと思える位あっさり描けたものだ。
これまでは60%の美しさのおばさんを20%増しに仕上げたりできていたんだけど、今回のシノは最初から若くて美しいという状態なので、100%の美だと言える。
それが細部を軽く煮詰めたり、印象値をちょっちお高めに匙加減して、それで2割増しに仕上がるワケだから、これぞまさしく120%の美術作品に仕上がったと言えるのだ。
今までショウタにもマホにも散々馬鹿にされて来たからなぁ。
これで漸く見返すことができるんじゃないかな。この辛い3年間がやっと報われたんじゃないかな。
「私はキミの描く絵が好きっ! ファン1号になりますねっ!」
シノがオレの両手を掴んで、猛烈にアピールして来た。思わずドキッとする。
「いいえっ、ファン1号はアナタではないわ。そうね、2番目かしらね?」
オワァ~ッ! びっくりさせるなよっ!
前触れもなく唐突に現れたマホ。
ホンと普段はオレのことを極力避けているのにね。何でこんなタイミングで現れるのかねぇ。
それが、ニコニコと友好的な顔つきで近づいて来ると、目敏くシノをチラリと見る。
傍らにはマホとはいつでもワンセットの学友の少女がいて。
え~っと彼女の名前はなんだったっけ? まぁいっか思い出せなくても。
相も変わらずオレにはおどおどと会釈して来るので、オレもペコリ。
まぁこのヒトは、あくまで舞台の黒子みたいなものとして扱っていいだろう。
とにかく主役であるマホの性格から察するに、駅前の騒ぎを聞きつけて様子を見に来たのだろう。
そうしたら、課外実習中のオレ達の傍に見たこともないような美少女がいるワケで。
何なら、とりあえず挨拶だけでもしておこうと思ったんだろうね。
「どうしたのオマエ?」
オレの問いに、最初マホはまじまじとオレの目を見つめていたのだけれど、直ぐにフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
それから、ンッと言ってショウタに右手を差し出すと、クロッキーデッサンを見せろと要求するのである。
もちろんショウタのことだ。笑顔を崩さず素直に従っている。
マホはよろしいと言って澄まし顔でそれを受け取ると、静かにじっと見る。
それからマホはちらりとシノを見た。見比べているのかもしれない。
シノがニッコリと笑い返すので素直に頷くと、再び黙ってデッサンに目を落としている。
コイツが一体何を考えてこれからどうしようと思っているのか、オレには皆目見当がつかない。そもそもオレは、ここ最近の彼女のことがホンと苦手なのだから。
3年間どうやってもまともに女の子を描けなかったんだから、ガッツポーズで喜ぶ位いいよね。
「見せて下さいっ!」
シノはデッサンを受け取ると、どれどれぇ拝見しますねぇと言いながらじっと見た。
最初は軽い感じで臨んでいたのに、直ぐさま姿勢を正すと、顔つきがみるみる真面目なものに変わって行く。
俯いたまま黙り込んでしまうと、しまいにはぽろりと大粒の涙をこぼすのである。
「どっ、どうしたのかな? もしかして感動しちゃったのかな?」
彼女は無言でオレに抱き付いて来た。鼻水混じりに嗚咽しながら両肩を震わせている。
オレは両肩をポンポンと軽く叩いてやると、彼女は素直そうにこくりと頷くのである。
「おい、シノッ! らしくないぞっ!」
ショウタが驚いて訊ねると、鼻を啜りつつ、クロッキーデッサンをビッと差し出した。
「一体どうしちゃったのぉっ? オワッ! ちゃんと描けてるじゃんっ!」
ショウタのクロッキーを持つ手が震えている。
「あぁ。何か描けた」
ホンと、この苦労が一体何だったのかと思える位あっさり描けたものだ。
これまでは60%の美しさのおばさんを20%増しに仕上げたりできていたんだけど、今回のシノは最初から若くて美しいという状態なので、100%の美だと言える。
それが細部を軽く煮詰めたり、印象値をちょっちお高めに匙加減して、それで2割増しに仕上がるワケだから、これぞまさしく120%の美術作品に仕上がったと言えるのだ。
今までショウタにもマホにも散々馬鹿にされて来たからなぁ。
これで漸く見返すことができるんじゃないかな。この辛い3年間がやっと報われたんじゃないかな。
「私はキミの描く絵が好きっ! ファン1号になりますねっ!」
シノがオレの両手を掴んで、猛烈にアピールして来た。思わずドキッとする。
「いいえっ、ファン1号はアナタではないわ。そうね、2番目かしらね?」
オワァ~ッ! びっくりさせるなよっ!
前触れもなく唐突に現れたマホ。
ホンと普段はオレのことを極力避けているのにね。何でこんなタイミングで現れるのかねぇ。
それが、ニコニコと友好的な顔つきで近づいて来ると、目敏くシノをチラリと見る。
傍らにはマホとはいつでもワンセットの学友の少女がいて。
え~っと彼女の名前はなんだったっけ? まぁいっか思い出せなくても。
相も変わらずオレにはおどおどと会釈して来るので、オレもペコリ。
まぁこのヒトは、あくまで舞台の黒子みたいなものとして扱っていいだろう。
とにかく主役であるマホの性格から察するに、駅前の騒ぎを聞きつけて様子を見に来たのだろう。
そうしたら、課外実習中のオレ達の傍に見たこともないような美少女がいるワケで。
何なら、とりあえず挨拶だけでもしておこうと思ったんだろうね。
「どうしたのオマエ?」
オレの問いに、最初マホはまじまじとオレの目を見つめていたのだけれど、直ぐにフンと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
それから、ンッと言ってショウタに右手を差し出すと、クロッキーデッサンを見せろと要求するのである。
もちろんショウタのことだ。笑顔を崩さず素直に従っている。
マホはよろしいと言って澄まし顔でそれを受け取ると、静かにじっと見る。
それからマホはちらりとシノを見た。見比べているのかもしれない。
シノがニッコリと笑い返すので素直に頷くと、再び黙ってデッサンに目を落としている。
コイツが一体何を考えてこれからどうしようと思っているのか、オレには皆目見当がつかない。そもそもオレは、ここ最近の彼女のことがホンと苦手なのだから。
更新日:2022-10-15 14:49:05