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10 蚊帳の外
何でコイツ来てるの?
シノを見て、マホは思わず眉を吊り上げたのだけど。
「あら、マホさん。先程はどうも」
笑顔で挨拶をして来るので、マホは無理に笑顔を作り直し、部屋に招き入れた。
「ねぇホノオ、何でこんな時間にシノさんウチに連れて来たの? アンタは男だからワカんないだろうけど、夜の女性の一人歩きはとっても危ないのよ!」
遠慮なしにホノオに詰問すると、彼は辟易した様子で黙って頷いていた。
「あぁマホさん。私が無理を言ってホノオさんのお宅に訪問させて貰っているんです。ほら、私バルボラ機関から派遣されて来たでしょ。着任のご挨拶をホノオさんのご両親にしたいと思いまして。まぁホンとのところは、五砲家の皆さんと親しくお付き合いしたいなぁというのが本音なんですけど」
そう言って、ちらりとホノオの母を見ると、母はニコリと笑いシノを歓迎した。
「私、ホノオさんの絵のファン2号なんですよ」
シノもニッコリ笑うと。
「そうね、ファン1号はヨウちゃんだったわね」
母も屈託なく笑顔で頷いている。
「叔母さん、ヨウ姉さんの話を軽々しくここでするべきではありません」
険のある顔つきでマホが訴えると、ホノオの母は彼の背中をバシンと平手打ちする。
「痛ぇっ!」
「男なんだからシャキッとしなさい! せっかく2人もかわいい子がいるんだからさ」
そう言って揶揄うと、若者を残して自分は夕飯の準備に部屋を離れた。
「もう、母さん何なんだよ」
思わず愚痴をこぼすと、シノはいいお母さんじゃないですかと笑顔で宥めるのである。
そんな2人の親し気な態度を見て、マホは心中穏やかではいられなかった。
「それにしても、あの状況からよくご無事でいらっしゃいましたわね?」
マホは慇懃無礼に皮肉を言ったつもりなのだけど、ホノオにはあまり効いてない様子。
「お互い無事で何よりだな。捕まったらいろいろと厄介だろ。だから心配していたんだ」
ホンとに心配そうな顔をしていた。
その言葉にマホは顔を少しだけ赤くする。
そんな2人のやり取りを、シノは興味深そうな顔で見つめているのだ。
「ホノオさんとマホさんって今付き合っているんですか?」
率直な態度で2人に訊ねると。
「「えっ?」」
ホノオとマホは息ピッタリで驚きの声を上げたのだけど、その後の2人の態度は正反対だった。
マホは露骨にイヤそうな顔をして、シノにこう訊ねるのである。
「えぇとシノさんだっけ、バルボラの天使の? なら未来世界から来ているのだから、私とホノオの関係何て大体知っているんでしょ? それなのに何でそんなこと訊くかなぁ」
「社交辞令ですよ。だって私が何も確認せずにホノオさんにモーションかけたら、それは良くないですよね?」
至極尤もな回答である。しかしながら、マホにはどこか腑に落ちない何かを感じた。
あぁつまり、ホノオのこと大嫌いだけど好き。そんなアンビバレントな乙女心をシノに配慮されたのか。
それは、なかなかマホにとって屈辱的であった。
「なら、シノさんは、私がまだ少なからずホノオに気があると思っているんだ?」
ムッとした顔でマホがじろりと見るのだけど、シノは笑顔のまま少しも表情を崩さない。
「たとえそうでなくても、お父様からの命令には逆らえないんでしょうね」
シノの瞳の色は深く静かであり、さざ波ひとつ立っていない。
マホは、シノがこれから起こること全てを理解しながら自分に話しかけているのだと悟るのである。
「なら言っとくけど。コホン、私のホノオにちょっかい出すなよ」
シノにしか聞き取れない小声で呟くので精一杯である。
「マホ、オマエ何て言ったの?」
ホノオは、マホが未来人のシノにやり込められたと勘違いし、心配そうに訊ねたのだけど。
「何でもございません。煩いっ! ホノオは黙れっ!」
照れ隠しにホノオを突っぱねるマホを見て、シノは何だか微笑ましいものを見たと思った。
だけど、自分には使命がある。和んでばかりはいられないのだ。
マホは夕食の手伝いをすると言ってそそくさと部屋を離れた。その際に、シノの耳元にそっと囁くのである。
「泥棒猫、早くヤサに帰れ!」
すると、間髪入れずシノも笑顔でこう返すのである。
「煩いデコ助! お嬢なんだから無理して汚い言葉使わんといて!」
「なっ!」
悪口の点でも、場数を踏んだシノの方が一枚上手なのであった。
シノを見て、マホは思わず眉を吊り上げたのだけど。
「あら、マホさん。先程はどうも」
笑顔で挨拶をして来るので、マホは無理に笑顔を作り直し、部屋に招き入れた。
「ねぇホノオ、何でこんな時間にシノさんウチに連れて来たの? アンタは男だからワカんないだろうけど、夜の女性の一人歩きはとっても危ないのよ!」
遠慮なしにホノオに詰問すると、彼は辟易した様子で黙って頷いていた。
「あぁマホさん。私が無理を言ってホノオさんのお宅に訪問させて貰っているんです。ほら、私バルボラ機関から派遣されて来たでしょ。着任のご挨拶をホノオさんのご両親にしたいと思いまして。まぁホンとのところは、五砲家の皆さんと親しくお付き合いしたいなぁというのが本音なんですけど」
そう言って、ちらりとホノオの母を見ると、母はニコリと笑いシノを歓迎した。
「私、ホノオさんの絵のファン2号なんですよ」
シノもニッコリ笑うと。
「そうね、ファン1号はヨウちゃんだったわね」
母も屈託なく笑顔で頷いている。
「叔母さん、ヨウ姉さんの話を軽々しくここでするべきではありません」
険のある顔つきでマホが訴えると、ホノオの母は彼の背中をバシンと平手打ちする。
「痛ぇっ!」
「男なんだからシャキッとしなさい! せっかく2人もかわいい子がいるんだからさ」
そう言って揶揄うと、若者を残して自分は夕飯の準備に部屋を離れた。
「もう、母さん何なんだよ」
思わず愚痴をこぼすと、シノはいいお母さんじゃないですかと笑顔で宥めるのである。
そんな2人の親し気な態度を見て、マホは心中穏やかではいられなかった。
「それにしても、あの状況からよくご無事でいらっしゃいましたわね?」
マホは慇懃無礼に皮肉を言ったつもりなのだけど、ホノオにはあまり効いてない様子。
「お互い無事で何よりだな。捕まったらいろいろと厄介だろ。だから心配していたんだ」
ホンとに心配そうな顔をしていた。
その言葉にマホは顔を少しだけ赤くする。
そんな2人のやり取りを、シノは興味深そうな顔で見つめているのだ。
「ホノオさんとマホさんって今付き合っているんですか?」
率直な態度で2人に訊ねると。
「「えっ?」」
ホノオとマホは息ピッタリで驚きの声を上げたのだけど、その後の2人の態度は正反対だった。
マホは露骨にイヤそうな顔をして、シノにこう訊ねるのである。
「えぇとシノさんだっけ、バルボラの天使の? なら未来世界から来ているのだから、私とホノオの関係何て大体知っているんでしょ? それなのに何でそんなこと訊くかなぁ」
「社交辞令ですよ。だって私が何も確認せずにホノオさんにモーションかけたら、それは良くないですよね?」
至極尤もな回答である。しかしながら、マホにはどこか腑に落ちない何かを感じた。
あぁつまり、ホノオのこと大嫌いだけど好き。そんなアンビバレントな乙女心をシノに配慮されたのか。
それは、なかなかマホにとって屈辱的であった。
「なら、シノさんは、私がまだ少なからずホノオに気があると思っているんだ?」
ムッとした顔でマホがじろりと見るのだけど、シノは笑顔のまま少しも表情を崩さない。
「たとえそうでなくても、お父様からの命令には逆らえないんでしょうね」
シノの瞳の色は深く静かであり、さざ波ひとつ立っていない。
マホは、シノがこれから起こること全てを理解しながら自分に話しかけているのだと悟るのである。
「なら言っとくけど。コホン、私のホノオにちょっかい出すなよ」
シノにしか聞き取れない小声で呟くので精一杯である。
「マホ、オマエ何て言ったの?」
ホノオは、マホが未来人のシノにやり込められたと勘違いし、心配そうに訊ねたのだけど。
「何でもございません。煩いっ! ホノオは黙れっ!」
照れ隠しにホノオを突っぱねるマホを見て、シノは何だか微笑ましいものを見たと思った。
だけど、自分には使命がある。和んでばかりはいられないのだ。
マホは夕食の手伝いをすると言ってそそくさと部屋を離れた。その際に、シノの耳元にそっと囁くのである。
「泥棒猫、早くヤサに帰れ!」
すると、間髪入れずシノも笑顔でこう返すのである。
「煩いデコ助! お嬢なんだから無理して汚い言葉使わんといて!」
「なっ!」
悪口の点でも、場数を踏んだシノの方が一枚上手なのであった。
更新日:2022-08-27 14:18:26