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第一話 運命の始まり
「―――えっ!?」
若い魔道師の女が棚に置いてあったヴァルキリーの像に触れたとき、この物語は始まる事になった。
彼女が触れていたのは戦う女戦士の像だった。
鎧を着て、羽飾りの付いた金属の兜を被っていて、両手には剣を持っている。
本来は金色の長い髪が像に表現されていたが、今は黄緑色のカビの様な物に包まれていた。
彼女の持つ剣の先は上へ向けられていて、顔は隠されていた。
手の平に乗ってしまう程の大きさしかない物で、古ぼけている。
何かの金属で出来ていて、全体が薄汚れおり、腕や頬は錆の様な物があった。
像に触れたのはエルディア・スティラートと言う魔道師の女性だった。
美しい容姿をした青い髪の女性で、つばの広い帽子を被り、魔道師のローブを着ていた。
背中には長めの木の杖が背負われている。
彼女は魔法学院を出た魔道師で、オリディオール島と言う島から旅立った人物だった。
彼女は北東の大陸で冒険を終え、船で帰る途中にある出来事に会い、仲間達と共に海を漂流し、そこから島へ帰るために旅をしている内に今いる建物へたどり着いていた。
そんな彼女が触れた像は、触れられた事によって魔力を吸い、本来の役目を果たそうと動いた。
「……あっ……像が!?」
棚の中にあった像は、並べられた他の像を揺らしながら、剣の位置を変えていく。
「勝手に動いてる!?……どう言う事!?」
像は剣を180度回し、真下へ向けた。
「これは……一体?……」
エルディア目の前に、顔を見せた像がいる。
凛々しい顔立ちをしていて、美しい存在だった。
良く見ると、胸の中心が光っていた。
(光っている?……ここに何かあるのかな?……)
そう思った彼女は、そこへ指先を付けた。
「あっ!」
彼女の指先はすり抜け、像を貫通した。
「何これ……」
差し込んだ指先を上下に動かすと、水の中にある様な感触があった。
「少し……重さがある……」
そして動かしていた指先が頭部を通り過ぎた時、変化が起こった。
「あっ!」
像が真っ二つに割れたのだ。
「―――像が!?」
割れた中から光が生まれた。
「眩し!……い……」
その光は虹色の光だった。
強く発光していたため、彼女が思わず目を閉じてしまうほどだった。
(何……この……光……眩しくて……)
手の平を像へ向けることで、光は和らいだ。
(像の中に何が入って……)
エルディアは、恐る恐る像の中を見た。
(光しか……無い?)
割れた像の中は全て虹色の光で満たされていて、良く分からなかった。
そのため、彼女は光りが落ち着くまで待とうと思い、後ろへ下がろうとした。
(眩し過ぎる……ちょっと待ってから……)
そう思って光から背を向けようとした瞬間、割れた像の中から一斉に虹色の蝶が吹き上がった。
「―――っ!!」
無数の蝶は勢い良く像から出ると、瞬く間に部屋の中を埋め尽くしていく。
エルディアは、そこから逃げようとしたが、動けない事に気付いた。
(えっ!……動けない!?)
彼女が自分の体を見ると、そこには大量の蝶が張り付いていた。
(そんな!?)
虹色の蝶は、エルディアの体に次々張り付いていくと、彼女の体を動けなくした。
最初は足で、そこから上へ向い、頭部へ向って行く。
(そ、そんな……これじゃあ……逃げられない……)
必死に足を動かそうとするが、一歩も前へ歩く事はできなかった。
「だ、だれか!」
声を出すが、部屋の壁も虹色の蝶で埋め尽くされていて、音は全く響いていない。
そして蝶達は次々エルディアの体に張り付き、最後は頭部さえも覆っていった。
(い、嫌!こんな場所で……死ぬなんて!)
身をよじろうとするが、全く動けない状態になっていた。
彼女の脳裏に死と言うものが浮かんだ。
(ごめんなさい……ユラト……私……ここで……)
ユラトと言うのは彼女の幼馴染みで、同じ冒険者をしている青年だった。
エルディアが好意を寄せている人物で、旅をしているのも彼に会うためだった。
(ダメ……そんな事……考えちゃ……なんとか……して……)
彼を思う事で、力が湧いてきたが体は言う事を聞かない。
(もう一度会いたい……何としても!……)
全身に力を入れ、魔力を高めると、突然、意識が飛んだ。
「えっ!?」
エルディアは、今いる村の上空にいた。
(なに、これ!?)
若い魔道師の女が棚に置いてあったヴァルキリーの像に触れたとき、この物語は始まる事になった。
彼女が触れていたのは戦う女戦士の像だった。
鎧を着て、羽飾りの付いた金属の兜を被っていて、両手には剣を持っている。
本来は金色の長い髪が像に表現されていたが、今は黄緑色のカビの様な物に包まれていた。
彼女の持つ剣の先は上へ向けられていて、顔は隠されていた。
手の平に乗ってしまう程の大きさしかない物で、古ぼけている。
何かの金属で出来ていて、全体が薄汚れおり、腕や頬は錆の様な物があった。
像に触れたのはエルディア・スティラートと言う魔道師の女性だった。
美しい容姿をした青い髪の女性で、つばの広い帽子を被り、魔道師のローブを着ていた。
背中には長めの木の杖が背負われている。
彼女は魔法学院を出た魔道師で、オリディオール島と言う島から旅立った人物だった。
彼女は北東の大陸で冒険を終え、船で帰る途中にある出来事に会い、仲間達と共に海を漂流し、そこから島へ帰るために旅をしている内に今いる建物へたどり着いていた。
そんな彼女が触れた像は、触れられた事によって魔力を吸い、本来の役目を果たそうと動いた。
「……あっ……像が!?」
棚の中にあった像は、並べられた他の像を揺らしながら、剣の位置を変えていく。
「勝手に動いてる!?……どう言う事!?」
像は剣を180度回し、真下へ向けた。
「これは……一体?……」
エルディア目の前に、顔を見せた像がいる。
凛々しい顔立ちをしていて、美しい存在だった。
良く見ると、胸の中心が光っていた。
(光っている?……ここに何かあるのかな?……)
そう思った彼女は、そこへ指先を付けた。
「あっ!」
彼女の指先はすり抜け、像を貫通した。
「何これ……」
差し込んだ指先を上下に動かすと、水の中にある様な感触があった。
「少し……重さがある……」
そして動かしていた指先が頭部を通り過ぎた時、変化が起こった。
「あっ!」
像が真っ二つに割れたのだ。
「―――像が!?」
割れた中から光が生まれた。
「眩し!……い……」
その光は虹色の光だった。
強く発光していたため、彼女が思わず目を閉じてしまうほどだった。
(何……この……光……眩しくて……)
手の平を像へ向けることで、光は和らいだ。
(像の中に何が入って……)
エルディアは、恐る恐る像の中を見た。
(光しか……無い?)
割れた像の中は全て虹色の光で満たされていて、良く分からなかった。
そのため、彼女は光りが落ち着くまで待とうと思い、後ろへ下がろうとした。
(眩し過ぎる……ちょっと待ってから……)
そう思って光から背を向けようとした瞬間、割れた像の中から一斉に虹色の蝶が吹き上がった。
「―――っ!!」
無数の蝶は勢い良く像から出ると、瞬く間に部屋の中を埋め尽くしていく。
エルディアは、そこから逃げようとしたが、動けない事に気付いた。
(えっ!……動けない!?)
彼女が自分の体を見ると、そこには大量の蝶が張り付いていた。
(そんな!?)
虹色の蝶は、エルディアの体に次々張り付いていくと、彼女の体を動けなくした。
最初は足で、そこから上へ向い、頭部へ向って行く。
(そ、そんな……これじゃあ……逃げられない……)
必死に足を動かそうとするが、一歩も前へ歩く事はできなかった。
「だ、だれか!」
声を出すが、部屋の壁も虹色の蝶で埋め尽くされていて、音は全く響いていない。
そして蝶達は次々エルディアの体に張り付き、最後は頭部さえも覆っていった。
(い、嫌!こんな場所で……死ぬなんて!)
身をよじろうとするが、全く動けない状態になっていた。
彼女の脳裏に死と言うものが浮かんだ。
(ごめんなさい……ユラト……私……ここで……)
ユラトと言うのは彼女の幼馴染みで、同じ冒険者をしている青年だった。
エルディアが好意を寄せている人物で、旅をしているのも彼に会うためだった。
(ダメ……そんな事……考えちゃ……なんとか……して……)
彼を思う事で、力が湧いてきたが体は言う事を聞かない。
(もう一度会いたい……何としても!……)
全身に力を入れ、魔力を高めると、突然、意識が飛んだ。
「えっ!?」
エルディアは、今いる村の上空にいた。
(なに、これ!?)
更新日:2022-09-15 23:11:50