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no title

 親父が駅前で裸になって逮捕されてから三年経って、僕は大きく成長した。クラスの生徒からの罵倒や嘲笑に耐えることで、精神的に丈夫になったし、独学で学んだブレイクダンスで肉体も柔軟性と強靭さを手に入れることが出来た。


 僕は十九歳で、今まで父のことをパパと呼んでいたけど今日からは親父と呼ぶつもりだ。親父には感謝している。僕と家族は遠い町に引っ越した。知らない人ばかりで知らない場所だけれど、それでもこの町の空気は親父が裸になってコサックダンスを踊ったあの駅前に続いていると思うと、不思議と寂しさは紛れた。


 彼女は僕のブレイクダンスが好きだと良く言う。プロを目指したらなんてことも言われた。でも、僕にその気はない。僕は親父の子供だ。似たような血が僕の体を巡っている。学校は辞めて今はコンビニのバイトだけど、それは家族を養うだけの話だ。少なくとも親父がいないから僕が働かなければならない、なんてことは考えない。


 彼女に親父のことを話した。始めは呆気に取られていたけど、得に気にもしなかったし、事件のことも知らないと言った。彼女は嘘を付かない。本当に。そして良く笑う。僕は彼女が好きだ。この町で彼女と知り合って交際は一年になった。


 僕たちはこれからもこの町で生きていくと思う。だから親父には感謝している。彼女と出会えたことは、親父の存在が駅前にあってこそだったんだ。居場所がなくなるような恥ずかしさは消えうせたし、僕は堂々としている。だから、ありがとう親父。僕も踊るよ。

更新日:2022-07-10 18:26:38

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