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8 げそら
8 げそら
数週間後……
捜査を指揮して居る右川県警広域本部、統括刑事部長の倉斗奎丑(くらと ふみひろ)は、捜査会議が終わり他の刑事達が慌ただしく持ち場へと戻って行く姿を横目で見乍、提出された捜査日報を机に叩き付けると、巡査長の下蔵之伺(しもくら のぶみ)に向かって
「何も進展が無いのは、お前だけだな……状況から見ても殺害された陣代拡音に丸葉才盾(まるば としたて)が接触した事は、間違い無いだろう……」
と威圧的な態度で言った後、続けて
「近隣の聞き込みで得られた内容と隣に住んで居る金札令賀の証言が完全に一致して居る事から、可成り信憑性も高いし、此だけで十分だろう……」
と言ったが、巡査長の下蔵之伺は
「しかし丸葉才盾には、明確な動機が無いと思われる……」
と言い掛けた処で
「自分を訪ねて来た陣代拡音を事件現場に成った望梅台公園に連れ出しレイプしようとした丸葉才盾は、予想外の抵抗に焦り、弱らす心算で首を絞めたが、加減を誤り殺害して仕舞った……そして遺体を発電機跡の水槽に遺棄して逃走した……」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、焦らす様に言葉を切った後、更に自信有り気な態度で
「金に困って居たから……身代金を要求する事を思い付き、被害者、陣代拡音のスマホから脅迫メールを送ったが……現金の受け渡しに失敗すると同時に警察の存在に気付き、発覚を恐れた丸葉才盾は、証拠を隠滅して何食わぬ顔で今迄通りの暮らしに戻る心積じゃ無いのか……理論立てて考える事も出来ないな……地道に証拠を探す事も嫌だよな……お前は、何処迄腐ってるんだ……何日も捜査日報に空白を続けて其れで通るのか」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、強く怒鳴った。
「しかし、被害者と接触が有った花堂軌甫の事も調べる……」
と巡査長の下蔵之伺が言い掛けたが統括刑事部長の倉斗奎丑は
「金札令賀がはっきりと
『隣の丸葉才盾は、無職なのに金に困った様子も無く、日中も怪しい気配がする』
と言って居るのは、紛れの無い事実だろう……其れに花堂軌甫も
『皆坏の写真は、丸葉才盾のアカウントからリンクした物だと陣代拡音に言った』
と証言して居るのに……なにをチンタラしてるんだ……」
と怒りのボルテージを更に上げて言ったが、其れだけでは、収まらず
「丸葉才盾が、何度か不審者として通報され、事情を尋ね様とした警官と揉めた事を……知らないとは、言わせないぞ」
と怒り狂う様に統括刑事部長の倉斗奎丑は、罵声を撲付(ぶつ)けた。
「しかし丸葉才盾が主張するアリバイに就いても確認する……必」
と巡査長の下蔵之伺が言葉を返そうとしたが
「眠たい事を言う奴は、帰って寝てろ……犯人を捕まえる事がお前の職務じゃ無いのか……何か?……犯人の無実を証明する為にお前は、此処に居るのか……別件でも何でも構わない……丸葉才盾を逮捕出来る証拠を持って来い……どんな些細な事件でも引張る事さえ出来れば……後は、自白調書にサインさせるだけだ……他の事等考える必要は、無い……丸葉才盾だけだ ! ! 」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、強く言い切った。警察官は、階級が絶対で、上に逆らえる筈も無く
「カラスは、白い」
と言われれば、脱色するか、白いペンキでも塗るか……どんな馬鹿げた事でも従うしか無かったが
「しかし以前、幼女営利誘拐・殺人・死体遺棄事件で針淵絵浬の遺体が発見された、望梅台公園、発電機跡の水槽で、今回も被害者、陣代拡音が遺体で発見されてますし……」
と巡査長の下蔵之伺が食い下がったが……構わず統括刑事部長の倉斗奎丑は、強い口調で
「皆坏事件が如何したって言うんだ……死刑を執行された士堅大姿が幽霊にでも成って犯行を続けてるとでも言いたいのか……過去の事件に関連が有る様に見せ掛け捜査を撹乱して居る事も解らないのか」
と言った後、巡査長の下蔵之伺の顔を恐ろしい形相で睨み付け乍
「其れとも、以前の捜査が間違いで逮捕され無かった真犯人の犯行だとでも言いたいのか……何様の心算だ……言われた事も真面(まともに)出来ないお前に何が判るんだ……終わって仕舞った事件の真相なんか如何でも良い、何でも良いから丸葉才盾を引っ張れ」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、言い放った。
「確かに針淵絵浬の遺体には、レイプされた痕跡が有りましたが、今回で発見された陣代拡音の遺体には、其の痕跡が有りませんでしたし……」
と巡査長の下蔵之伺は、口籠る様な言葉を残すと、消える様に立ち去って行った。
数週間後……
捜査を指揮して居る右川県警広域本部、統括刑事部長の倉斗奎丑(くらと ふみひろ)は、捜査会議が終わり他の刑事達が慌ただしく持ち場へと戻って行く姿を横目で見乍、提出された捜査日報を机に叩き付けると、巡査長の下蔵之伺(しもくら のぶみ)に向かって
「何も進展が無いのは、お前だけだな……状況から見ても殺害された陣代拡音に丸葉才盾(まるば としたて)が接触した事は、間違い無いだろう……」
と威圧的な態度で言った後、続けて
「近隣の聞き込みで得られた内容と隣に住んで居る金札令賀の証言が完全に一致して居る事から、可成り信憑性も高いし、此だけで十分だろう……」
と言ったが、巡査長の下蔵之伺は
「しかし丸葉才盾には、明確な動機が無いと思われる……」
と言い掛けた処で
「自分を訪ねて来た陣代拡音を事件現場に成った望梅台公園に連れ出しレイプしようとした丸葉才盾は、予想外の抵抗に焦り、弱らす心算で首を絞めたが、加減を誤り殺害して仕舞った……そして遺体を発電機跡の水槽に遺棄して逃走した……」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、焦らす様に言葉を切った後、更に自信有り気な態度で
「金に困って居たから……身代金を要求する事を思い付き、被害者、陣代拡音のスマホから脅迫メールを送ったが……現金の受け渡しに失敗すると同時に警察の存在に気付き、発覚を恐れた丸葉才盾は、証拠を隠滅して何食わぬ顔で今迄通りの暮らしに戻る心積じゃ無いのか……理論立てて考える事も出来ないな……地道に証拠を探す事も嫌だよな……お前は、何処迄腐ってるんだ……何日も捜査日報に空白を続けて其れで通るのか」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、強く怒鳴った。
「しかし、被害者と接触が有った花堂軌甫の事も調べる……」
と巡査長の下蔵之伺が言い掛けたが統括刑事部長の倉斗奎丑は
「金札令賀がはっきりと
『隣の丸葉才盾は、無職なのに金に困った様子も無く、日中も怪しい気配がする』
と言って居るのは、紛れの無い事実だろう……其れに花堂軌甫も
『皆坏の写真は、丸葉才盾のアカウントからリンクした物だと陣代拡音に言った』
と証言して居るのに……なにをチンタラしてるんだ……」
と怒りのボルテージを更に上げて言ったが、其れだけでは、収まらず
「丸葉才盾が、何度か不審者として通報され、事情を尋ね様とした警官と揉めた事を……知らないとは、言わせないぞ」
と怒り狂う様に統括刑事部長の倉斗奎丑は、罵声を撲付(ぶつ)けた。
「しかし丸葉才盾が主張するアリバイに就いても確認する……必」
と巡査長の下蔵之伺が言葉を返そうとしたが
「眠たい事を言う奴は、帰って寝てろ……犯人を捕まえる事がお前の職務じゃ無いのか……何か?……犯人の無実を証明する為にお前は、此処に居るのか……別件でも何でも構わない……丸葉才盾を逮捕出来る証拠を持って来い……どんな些細な事件でも引張る事さえ出来れば……後は、自白調書にサインさせるだけだ……他の事等考える必要は、無い……丸葉才盾だけだ ! ! 」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、強く言い切った。警察官は、階級が絶対で、上に逆らえる筈も無く
「カラスは、白い」
と言われれば、脱色するか、白いペンキでも塗るか……どんな馬鹿げた事でも従うしか無かったが
「しかし以前、幼女営利誘拐・殺人・死体遺棄事件で針淵絵浬の遺体が発見された、望梅台公園、発電機跡の水槽で、今回も被害者、陣代拡音が遺体で発見されてますし……」
と巡査長の下蔵之伺が食い下がったが……構わず統括刑事部長の倉斗奎丑は、強い口調で
「皆坏事件が如何したって言うんだ……死刑を執行された士堅大姿が幽霊にでも成って犯行を続けてるとでも言いたいのか……過去の事件に関連が有る様に見せ掛け捜査を撹乱して居る事も解らないのか」
と言った後、巡査長の下蔵之伺の顔を恐ろしい形相で睨み付け乍
「其れとも、以前の捜査が間違いで逮捕され無かった真犯人の犯行だとでも言いたいのか……何様の心算だ……言われた事も真面(まともに)出来ないお前に何が判るんだ……終わって仕舞った事件の真相なんか如何でも良い、何でも良いから丸葉才盾を引っ張れ」
と統括刑事部長の倉斗奎丑は、言い放った。
「確かに針淵絵浬の遺体には、レイプされた痕跡が有りましたが、今回で発見された陣代拡音の遺体には、其の痕跡が有りませんでしたし……」
と巡査長の下蔵之伺は、口籠る様な言葉を残すと、消える様に立ち去って行った。
更新日:2022-07-03 03:41:03