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桜の季節

指差した先に吐息はこぼれ
咲き誇る桜に消える
はしゃぐ首たちを追いかけて
笛の音が 鳴る 鳴る 鳴る

ちっぽけな剃刀の刃さえ
いのちを紡ぐ赤い糸
大切なものを見失うなら
いっそ全てを捨て去って

春は死にたい季節
麗らかな陽に照らされる頃
僕は桜の木の下を思う
きっとそこに待っている


寝ぼけた頭に朝日は落ちて
立ち並ぶ木々の手招き
揺れる引力は魔術のよう
花吹雪 散る 散る 散る

一切はカゲロウの薄い羽
油のような嘔吐物
大概な意味もわからないなら
いっそ全てを受け入れて

春は夢見る季節
暖かな風 僕に巡って
花は艶めかしく歌い笑う
きっとそこで待っている


春は狂気の季節
歪められゆく意識の中で
満開の桜の下
きっとそこは待っている

更新日:2022-03-21 22:52:16

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