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待合室にて

 早いほうが込まないだろうと、朝一で病院に来た二人は唖然とした。もう人でごった返している。
 受付で診断書を渡し産婦人科へと向かった。
 産婦人科の前は椅子もいっぱいで立っている人もいる。
 そんな中、雄一はいち早くあいた椅子に座りスマホをいじり始めた。
「みんな立ってるのよ。健康なあなたが座るなんて……」
 加奈子がそっと注意すると、
「俺だって疲れてるんだ。わざわざ来てやったんだから文句言うな」
 露骨に不機嫌そうに雄一は言う。
 大きなおなかを抱えた人ですら立っているのにいい気なものだ。加奈子の思いなど雄一に伝わるはずもない。
 じゅぷんも待つと椅子が空いたので加奈子はそこに腰を下ろす。
 いったいどうなるんだろう。
 加奈子は不安だった。
 最初に言った病院では、はっきりしたことを言ってくれなかったので、こうして待ったいると不安は増してくる。
 子宮に問題があるのだと加奈子は思ってる。
 子宮筋腫か内膜症か。腺筋症か。
 他には何があるだろうか?
 加奈子はネットで調べた知識で考えてみる。
 いや、駄目だ。
 多分、想像しているような病気ではないはずだ。
 そうでなければわざわざ総合病院に紹介状を書いたりしない。
「橘さん」
「はい」
 返事をして立ち上がりかけると、看護師は近づいてきて
「紹介状の宛先になっている先生は、病棟で出産があって分娩室に入ってます。かなり待つと思いますがどうしますか? 他の先生ならすぐにお呼びできますが?」
 加奈子は一瞬迷ったものの、雄一の機嫌が気になった。
「ほかの先生で構いません。早めにお願いします」
「分かりました。十分ほどでお呼びしますので、お待ちください」
 加奈子はほっと息をついた。もう一時間以上待っている。雄一ではないがあまり待たされるのは嫌だ。
「橘さん、三番の診察室へどうぞ」
 呼ばれたので診察室に入ろうと思い、雄一を見た。彼はスマホゲームに熱中している。
 最初から二人で診察室に入らなくてもいいだろうと、雄一には声をかけずに加奈子は診察室に入った。
 
 


更新日:2022-03-28 15:12:38

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