世間を見渡せば、辺り一面ピンク色のハートマークやらＬＯＶＥやらと、浮かれきった文字で溢れかえっている。
　そう、今日は二月一四日。世間一般では〝バレンタインデー〟と呼ばれる、女性が男性へ愛を伝え、チョコレートを贈る日。
「皆、浮かれまくってさ…リア充爆発しろっ！」
　右腕を突き上げ、空虚に怒りをぶつけるねこ娘。だが、直後、ガクリと肩を落とし、大きな溜め息を零す。
「わたしだって…わたしだってね！　勇気さえあれば…」
　ピーとモンローが世界を血一色に震撼させた事件さえなければ、きっと、きっと今頃は――。
　しかし、無い事になった過去を今さら悔やんでも戻っては来やしない。鬼太郎を、この世界を救うには、その道を選択する他なかった訳だし…。
「後悔はしてない、わよ…」
　妖怪や人間、この世界を救えたのだから、無論、後悔はない。
　無い、のだけれど。
　どうも煮え切らない。彼女の本心は、全く〝無い〟とも言い切れなかった。
　あの時は、いつの日か、きっと勇気を出して再チャレンジ出来ると思っていたが、結局、勇気が出ぬまま、気づけばあれからズルズルと一〇年の月日が経過してしまっていた。
　もし、拒絶されでもしたら、今のように友達でいられる自信もない。一緒に肩を並べて、今までのように依頼をこなす勇気もない。
　
　だったら。