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頼まれたからって一緒に寝ないよね

 そして、翌日。
 朝まで降っていた雨も止み、ぬけるような青空が広がっていた。綺麗に舗装された石畳の上の水たまりに、雲一つない青空が映っている。
「いつまで拗ねてる。いい加減に機嫌を直せよ」
 無視。
「何を怒ってるんだよ。おまえが言い出したことだろう」
 後ろでぶつぶつ言い訳しているラディアンを無視して、足早に歩いた。
「レジェがどうしてもって頼むから……」
「止めて!」
 勢いよく振り返ったはずみに、水たまりに足を突っ込んでしまい、靴が水浸しになる。
 ああ! 苛々する!
 全ては、目を覚ましたときからだ。
 今朝とても穏やかな気持ちで目が覚めた。いや、半分起きて半分眠っているような、夢の中を漂っていた。
 ここ数日、肩が凝るほど体を硬くして眠っているのに今朝は、何かに守られているように思えた。暖かい雲に包まれているような、安らぎを感じていた。
 とても幸せな気持ちで、ゆっくりと目を開けて……愕然とした。
 目の前、鼻に噛みつけそうな位置に、ラディアンの顔があった。
 私はラディアンの腕の中にいた。彼に抱かれ、その胸にしがみついたまま、目が覚めた。
 とっさに何も考えられない私に、ラディアンは「起きたのか?」と悪びれずに微笑んだ。その笑顔に思わず「おはよう」と、返事をしたが、すぐに我に返って起きあがった。ともすればまっ白になって行く頭を抱えて、寝台にしゃがみ込む。
 何がどうなっているのか、まったく分からなかった。
 昨夜、私は奥の寝台で眠った。今もその寝台にいる。
 だとすれば……。
 頭を抱えたまま唸っていたら、「風邪ひいて頭でも痛いのか?」と、心配そうなラディアンに、顔を覗き込まれた。
 どう考えても、勝手にラディアンが寝台に入り込んできたとしか思えなくて、心配そうな彼の頬を力いっぱい平手打ちした。
 真っ赤な頬のまま、言い訳を始めようとした彼を遮って文句を言おうと口を開きかけたが、彼に凄まじい目で睨まれて、大人しく言い訳を聞いた。
 彼の話から想像すると、昨夜私は、眠っていたラディアンを揺り起こして、「一緒に寝て」と頼んだらしい。彼もさすがに驚いて絶句したが、ぼろぼろと泣き出した私は彼にしがみついて離れない。で、朝まで一緒に眠っていた。
 ラディアンの話を聞いて、赤くなっていた顔が青ざめた。

更新日:2022-03-02 13:20:00

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