• 35 / 80 ページ

出し物、決定

 それから幾日かが過ぎていった。
 ドニファンたち8年生の行動がだんだん大胆になっていく他は、学校では比較的静かで平和な日々が続いていた。

 まだ9月ではあったが、すでにこの時期からバブリック校では、年末の大きな行事に向けて準備を始めるのだった。
 創立祭のための委員が選出され、どんな催しをするかなどの決定がされ、その出し物を発表する日までの計画を立てていった。
 担任は内容に口は出さず、ただアドバイスをする程度だった。全ては生徒の自主行動に任されていて、学年の出し物が成功するか否かは皆の頑張り次第で決まった。
 低学年の頃はそれほど熱心にやる必要はなく、これまでは先輩の劇や展示を見たりするだけだった。だが4年生ともなると、そろそろちゃんとしたイベントが出来るということを、他の学年や教師に示す頃だった。





 そのため委員長ブルーテル・パウロのやる気は、他の生徒よりずっと大きかった。
 日頃は冷静な彼が創立祭について熱く語り、みずから実行委員にも立候補して頑張り始めた。そもそも4年は面倒くさがりが多く、誰も委員をやりたがらなかったため、それを決めるだけでも時間を浪費してしまったからだ。


 そして誰が提案したのか、いつのまにか4年の出し物は劇と決まってしまっていた。
 どうやら委員長がクライスや先輩などに相談したところ、“そろそろ劇がいいのではないか”とアドバイスされたようだった。
 4年には芸達者やハンサムやお調子者が多く、地味で手間のかかる展示よりは、派手で目立てる劇にした方が合っていると思われた。クラスで採決を取る時も、みな何となく「それでいいんじゃね?」という雰囲気になっていた。
 もちろん自分が面倒な役をやるつもりはなく、誰かがやるだろ‥と考えている者がほとんどだった。



 ちなみに、これまで何かとレミに突っかかっていたキャクタスも、今は大人しくなっていた。
 森での出来事で張り合う気も失せたのか、相変わらずクラスには溶け込んでいなかったが、あれこれとバトルを仕掛けることはなくなった。
 暇な時にはたいてい8年生のところへ行ってしまうので、未だに彼とは充分な交流が出来ていなかった。そこがブルーテルは心配ではあったのだが、創立祭の準備にかかりきりになってそれ所ではなくなった。













 やがて彼が率いる企画実行委員は、ある作戦を極秘に立ち上げた。
 それは今後の活動にとってとても重要な内容で、そのために新たな有志をつのって対策を進めていった。
 彼らのターゲットはとても勘が良く、事前に察知されてしまうと失敗する可能性が高かった。そのため彼はさらに、こういった作戦に詳しいアドバイザーを呼び、問題点を指摘してもらうことにした。

 話し合いの結果、アドバイザーも作戦に協力することになった。
 そして今後のスケジュールも詰まっていたため、すぐに作戦が決行されたのだ。






 生徒用の会議室に集まった有志たちは、対策本部長のブルーテルを前に最後の注意を与えられていた。

 「多分、彼は嫌がるだろうから、計画通りに上手くやるんだよ」
 「ああ、任せとけ」
 「上手におびき寄せてやるよ」


 そこにいたのはネイサン、クリン、アーミスト、3年の助っ人ロディー、力自慢のカイルなどだった。
 にぎやかしをあまり投入すると、ふざけてばかりで失敗する恐れがあった。4人全員がやりたがったが、何とか2人に留めることに成功した。
 また、メンバーにはあまり警戒されないだろう3年生を多く投入しておいた。



 そしてこの日、スペシャルアドバイザーとして、トム・ウィルキンズがみずから参加していた。
 彼は以前からケンカ番長の先輩の下で動いたりして、こうした作戦行動にはめっぽう強かった。しかも戦闘員の頭数をそろえるために、学校中から兵士を勧誘して回った経験もあった。
 今回は彼の部下の情報部員は参加せず、出来るだけ少数精鋭で向かう予定だった。

 有志たちはトムから勧誘・説得・捕獲についてのコツを、色々とレクチャーされていた。
 相手を騙すまでは行かないが、その気にさせて仲間に引き入れるにはどうするか、説得中に逃亡された時の対処、最後のダメ押しで口にする殺し文句────など、これからの人生でも、恋愛や仕事で色々と使える内容が多かった。
 それで彼らは今ではノリノリで、「必ず相手をオトしてみせる」と豪語していた。

 実際のところ、ターゲットは4人程いたのだが、今回はその中でも一番手ごわそうな相手に向かう予定だった。






 ブルーテルはそんな彼らに、この作戦の意義を再び伝えた。
 「これもクラスのためなんだ。あの役はどうしても、彼らでないと出来ない。だから決死の覚悟でやり遂げて欲しい」

 “あの役”とは、どうやら祭りにやる劇の配役について言っているようだった。


更新日:2022-05-18 10:54:41

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook