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 結局、おばあさまには寄り道とびしょ濡れの件で軽く叱られた。あんまり寄り道をしていると、余計なことが起こるかもしれない、と。それと、年が明ければもうすぐに受験があるのだから、体は大切にしなさい、と。
 渡された黒い傘については、悪いものではないから安心しなさい、と言ってもらえた。けれど、次に会うことがあれば、お礼を言って早く返した方がいいらしい。あれが誰だったのかわからない、と言ったけれど、それについては大したことも言われなかった。けれどおばあさまにはもっと何か、わかっていることがあるように思う。あれは何者だったのだろう?
 とりあえず、あれの正体がそうだとは思えなかったけれど、雨傘男の話に従うことにした。つまりは、翌日、渡された傘を持ってまたバス停に行くことにしたのだった。折り畳み傘なので、持ち歩いてもあまり邪魔にならずに済む。なかなか便利なものだし、これなら誰かに持っていかれることも減るだろう。いいことを知った。
 あの人は何者だろうと考えてみる。おばあさまの話からして、害のある存在ではないらしい。ただ、あまり色々と教えてくれなかったことや、傘は早く返した方がいい、と言っていたことからして、おばあさまはあまりあの人と接してほしくはないらしい。もしくは、単純によい側面だけの存在、というわけではないのか。
 一日中傘をどう返そうかと考えながら過ごし、やっと帰る時間になった。雨傘男であればバス停に置いておくだけでよいのだけれど、あれはたぶん雨傘男ではない。ならどう返せばいい?普段から持ち歩いていれば、そのうち道端で会うこともあるかもしれないけれど・・・そのときどう話しかければいい?そもそも相手の顔をちゃんと覚えているだろうか。自信がない。全くの別人に話しかければ嫌なことになるし。
 なぜバス停に行くのかもよくわからなくなりながら、色々と考えつつバス停に向かう。そういえば寄り道についても叱られたんだった。まあこのくらいならかまうまい。それに、傘を返さなくては――でもどうやって?

更新日:2021-12-20 19:37:46

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