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多重人格の後輩女の子をイカせたら、人格が消えた!
春彦は、会社の仲間らとの飲み会を終えて一人、歩いていた。
風俗いっちゃう?と冗談なのか本気で言っていたのかわからないやつらとは違う方向の駅に向かっていた。
――そういえば、しばらくしてないな。一緒についていけばよかったかぁ。
酒と食事、愚痴とくだらない話で温まった体は、ひんやりした空気に触れて心地よい。酔い覚ましにはちょうどよかった。
人通りの多い大通りから一本外れた道は静かで、自分のペースでゆっくり進む。
少し先から男の声がした。すぐに女の声も聞こえてきた。
春彦は、ふと顔を上げた。
ビルの壁際に追いやられた女性が男2人に両脇を壁ドンされていた。
見るからに女性はおびえている。胸を隠すようにトートバッグを抱えていた。
「おごるし、荷物も持ってあげるから、一緒に飲に行こうよぉ」
チャラい青年の一人が、彼女からトートバックを無理矢理とりあげた。
小柄な背丈の彼女はおびえてなにもできず、自分の大きな胸を抱えるように腕で守りに入った。
春彦は、その寄せられた双丘に目が行ってしまった。巻きこまれても面倒だと、無視して通り過ぎようとした。
でも、二度と目にすることない胸をチラッと見てしまった。
「香純ちゃん?」
外側にはねるミディアムヘアの彼女の顔を見て、春彦は思わず声が出てしまっていた。
おびえた彼女と目が合った。
専門学校時代の後輩で、そこまで仲良かったわけではなかったが、よく覚えていたなと春彦は思った。
「あ? おまえ、なんなんだよ」
チャラい青年2人がふり返った。
「嫌がっているからやめろよ」
「ああ? 遊ぼうってさそってるだけだよ」
「だから、彼女はそれを嫌がっているから」
酒の勢いもあって、強気になっていることを春彦は自覚していた。後輩を目の前にして逃げるわけには行かない。
春彦は男たちを無視して間を割って、香純に近づこうとした。
「イってーな」
ドンと、男がわざと肩をぶつけてきた。
「誰の前を横切ろうと、してんだよっ」
「うぐっ」
顔面を一発殴られた春彦は、その場に尻もちをついた。
「けっ、よわっ」
「ちっ。気分が冷めちまった」
「別のもっとノリのいい子を探そうぜ」
「あぁ……」
「これ、返しておくわ」
春彦は香純の荷物を投げつけられた。
胸部に強い衝撃を受けた。
幸い、受けとめることができて、辺りに中身が散らばることはなかった。
「……永瀬……せんぱい……」
黒のインナーシャツに胸の開いたモスグリーンのシャツを着て、白い幅広のパンツをはいていた香純がかけ寄ってきてくれた。
柑橘系の香りがほのかに流れてきて、鼻腔をくすぐった。
「大丈夫だった香純ちゃん? こんなヘタレなところを見せちゃって。はい、コレ」
春彦は目の前の香純にトートバックを差し出した。
専門学校を卒業して2年ぶりに会った香純。今年、彼女も社会人になったが、学生時代のまだ幼い面影が残っていた。
香純はバックを受け取ろうとせず、動きを止めていた。
まるで香純の感情が顔からなくなったように表情が消えていた。
「香純ちゃん?」
「な、なんでこんなとき……に……」
香純のまぶたが静かに閉じていく。
すぐに目が開いた。
あらためて春彦は香純に見つめられた。
「ふふっ、永瀬先輩。助けてくれてありがとうございます。大丈夫ですか?」
突然、香純の声が明るくなった。
香純はトートバックを持って自分の肩にかけて、倒れた春彦の腕をとって立ちあがるのを手伝った。
「あ、ありがとう……」
香純はとても笑顔だった。
春彦は、香純のその表情にすごく違和感があった。
香純は、ついさっきまで男2人にしつこい勧誘を受けていたのだ。それなのにそんなことはなかったと思えるほど、再会を喜ぶかのように笑顔なのだ。
「すごくお久しぶりですね。良かったら、助けてくれたお礼をさせてください」
春彦は香純に腕をからめられた。そして、ピッタリと体をつけてきて、香純の大きな胸に腕が当たる。
薄手のシャツの上からでも分かってしまうほどのやわらかさだった。
さっきよりも強い香純の柑橘系の香りが感じられる。
――しかし、彼女はこんなにハキハキと明るく話す感じじゃなかったような。
社会に出て人柄がかわったのだろうと思いながら春彦は、歩き出した。
すると、香純が春彦を引き連れるようにすぐ近くにあった建物に入ろうする。
「ちょっと待って、どこに? 香純ちゃん? ここは」
表の壁には「休憩」の文字と料金が書かれた看板が光に照らされていた。
「もちろん2人っきりになれる場所ですよ」
風俗いっちゃう?と冗談なのか本気で言っていたのかわからないやつらとは違う方向の駅に向かっていた。
――そういえば、しばらくしてないな。一緒についていけばよかったかぁ。
酒と食事、愚痴とくだらない話で温まった体は、ひんやりした空気に触れて心地よい。酔い覚ましにはちょうどよかった。
人通りの多い大通りから一本外れた道は静かで、自分のペースでゆっくり進む。
少し先から男の声がした。すぐに女の声も聞こえてきた。
春彦は、ふと顔を上げた。
ビルの壁際に追いやられた女性が男2人に両脇を壁ドンされていた。
見るからに女性はおびえている。胸を隠すようにトートバッグを抱えていた。
「おごるし、荷物も持ってあげるから、一緒に飲に行こうよぉ」
チャラい青年の一人が、彼女からトートバックを無理矢理とりあげた。
小柄な背丈の彼女はおびえてなにもできず、自分の大きな胸を抱えるように腕で守りに入った。
春彦は、その寄せられた双丘に目が行ってしまった。巻きこまれても面倒だと、無視して通り過ぎようとした。
でも、二度と目にすることない胸をチラッと見てしまった。
「香純ちゃん?」
外側にはねるミディアムヘアの彼女の顔を見て、春彦は思わず声が出てしまっていた。
おびえた彼女と目が合った。
専門学校時代の後輩で、そこまで仲良かったわけではなかったが、よく覚えていたなと春彦は思った。
「あ? おまえ、なんなんだよ」
チャラい青年2人がふり返った。
「嫌がっているからやめろよ」
「ああ? 遊ぼうってさそってるだけだよ」
「だから、彼女はそれを嫌がっているから」
酒の勢いもあって、強気になっていることを春彦は自覚していた。後輩を目の前にして逃げるわけには行かない。
春彦は男たちを無視して間を割って、香純に近づこうとした。
「イってーな」
ドンと、男がわざと肩をぶつけてきた。
「誰の前を横切ろうと、してんだよっ」
「うぐっ」
顔面を一発殴られた春彦は、その場に尻もちをついた。
「けっ、よわっ」
「ちっ。気分が冷めちまった」
「別のもっとノリのいい子を探そうぜ」
「あぁ……」
「これ、返しておくわ」
春彦は香純の荷物を投げつけられた。
胸部に強い衝撃を受けた。
幸い、受けとめることができて、辺りに中身が散らばることはなかった。
「……永瀬……せんぱい……」
黒のインナーシャツに胸の開いたモスグリーンのシャツを着て、白い幅広のパンツをはいていた香純がかけ寄ってきてくれた。
柑橘系の香りがほのかに流れてきて、鼻腔をくすぐった。
「大丈夫だった香純ちゃん? こんなヘタレなところを見せちゃって。はい、コレ」
春彦は目の前の香純にトートバックを差し出した。
専門学校を卒業して2年ぶりに会った香純。今年、彼女も社会人になったが、学生時代のまだ幼い面影が残っていた。
香純はバックを受け取ろうとせず、動きを止めていた。
まるで香純の感情が顔からなくなったように表情が消えていた。
「香純ちゃん?」
「な、なんでこんなとき……に……」
香純のまぶたが静かに閉じていく。
すぐに目が開いた。
あらためて春彦は香純に見つめられた。
「ふふっ、永瀬先輩。助けてくれてありがとうございます。大丈夫ですか?」
突然、香純の声が明るくなった。
香純はトートバックを持って自分の肩にかけて、倒れた春彦の腕をとって立ちあがるのを手伝った。
「あ、ありがとう……」
香純はとても笑顔だった。
春彦は、香純のその表情にすごく違和感があった。
香純は、ついさっきまで男2人にしつこい勧誘を受けていたのだ。それなのにそんなことはなかったと思えるほど、再会を喜ぶかのように笑顔なのだ。
「すごくお久しぶりですね。良かったら、助けてくれたお礼をさせてください」
春彦は香純に腕をからめられた。そして、ピッタリと体をつけてきて、香純の大きな胸に腕が当たる。
薄手のシャツの上からでも分かってしまうほどのやわらかさだった。
さっきよりも強い香純の柑橘系の香りが感じられる。
――しかし、彼女はこんなにハキハキと明るく話す感じじゃなかったような。
社会に出て人柄がかわったのだろうと思いながら春彦は、歩き出した。
すると、香純が春彦を引き連れるようにすぐ近くにあった建物に入ろうする。
「ちょっと待って、どこに? 香純ちゃん? ここは」
表の壁には「休憩」の文字と料金が書かれた看板が光に照らされていた。
「もちろん2人っきりになれる場所ですよ」
更新日:2021-11-26 20:16:19