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第二話 リコイヌ城塞潜入

 リコイヌ城塞に続く谷は、盗賊の巣窟だった。
 数歩歩けば、連中のねぐらに突き当たる。
 どうやら、こいつらが、宦官の話しに出てきた、野に放たれた男どもらしい。
 何か収穫がないと、中にも入れて貰えないわけだ。
 どいつもこいつも、飢えたギラつく眼をしてオラついている。
 相手にしていればキリがないし、どちらにしろ、正面から突入する手はない。
 侵入経路は崖の上だ。

 夜中を待って、行動を開始する。
 白い岩肌の露出した、峻烈な谷の外縁を、登山装備で這い進み、城塞の左右と、背後に聳える崖の上に出た。
 目指すは、最奥に位置する領主の天守閣。
 背後の崖の頂上に、縄を結んだ釘を打ち込み、崖に半ば埋もれる形で建てられた、その城郭の最上部に降下する。

 着地して、登山装備を隠していると、松明を掲げた見張りが近づいて来るのが分かった。
 青黒い顔で、死んだ目をした、幽鬼のような男二人。
 精も根も搾り取られ、それでも、悪徳の底から出られない者たち。
 物陰に隠れてやり過ごし、背後から急襲する。
 一人の喉を、背後から短刀で掻き切ると、横に並んだもう一方の見張りが、虚ろな顔をこちらに向けてきた。
 動作も緩慢で鈍い。
 腰に差した剣を引き抜く合間に、短刀を、その心臓に投げる。
 空気の抜けたような音を出しただけで、声も殆ど上げずに見張りは頽れた。

 手早く服を交換し、見回りのふりをして、城内に潜入する。
 直ぐに嬌声が聞こえてきた。
 その声を頼りに、暗い城内を進んでいると、露出の激しい格好をした、見事な肉体の女に行き当たった。

更新日:2022-03-10 01:12:22

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