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第六章 山下梅香の物語 遺産

【前書き】

 ミヤコ・メイドハウスバトラーに任命された山下梅香は、ミヤコを歩く毎日を過ごしていた。

 気になっていた織田千代子の事も解決し、今はメイドハウスの設立準備のために、その敷地を探していたのである。

 そして思い出の学校へたどり着き、そこから土地が見つかり、建物が建ち、テレビ局がやって来た。

 そしてテレビ出演することとなり、その結果、一通の手紙が送られてきた……
 まさか自分にも、千代子のような……

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01 超色っぽい梅香さん

 日本帝国の古都、京都がマルスへ丸ごと移転して程なくした頃、ミヤコと名前を変えた京都は、少しずつ落ち着いてきました。

 市内には鴨川がそれなりに流れ、一応東山連峰に見立てた山並みもあります。
 できる限りの文化遺産は移設されており、この後、二次移設計画が計画されており、京都近郊の多くの名所なども移設される予定です。

 なんせ人がいないのですから簡単なのですよ。

 山下梅香は感慨深く、ミヤコの三条あたりを歩いていました。
「こうして歩けるなんて夢のようね……」

 京都宮川遊郭六条楼で娼妓をしていた山下梅香、あのまま悪い病気をもらい、朽ち果てると覚悟していた日々が、嘘のようです。

 織田千代子の件も解決し、彼女の妹になるめぐみが現れ、幸せそうな千代子に、心から良かったと思える梅香さんです。

「めぐみさんも文さんも可愛いし、早くこちらに呼んであげたいわね、やはり育った場所に住まうほうがいいわ」
「嫌なことがあったとしても、故郷なんだから……」

「故郷があるほうが、いいに決まっているわ、頑張ってミヤコ・メイドハウスを設立しなくては……」

 先ごろ『夫人』に昇格し、ミヤコ・メイドハウスバトラーを拝命した山下梅香は、ハウス設立の準備に来京したのです。

 ミヤコ・メイドハウスは都女子学園を管轄し、宮川遊郭六条楼を、ゲストハウスとして管理することは、決まっていますが、後は未定なのです。

 美子さんから、
「ゆっくりとすればよいですよ」
 と、いわれていますが、やはり前倒しで設立したいと、考えている梅香さん。

 そういうわけで、まずはハウスの所在地を探して、毎日ミヤコを歩いているわけです。

「どこかいいとこないかしら……同志社なんて良いけど、とるわけにはいかないし……郊外は避けたいし……難しいわね……」

 見るからに優しそうで、超色っぽい梅香さん。
 昨日の夜、宿泊ホテルのバーでオレンジ・サキニーという、日本酒とオレンジジュースのホットカクテルなどを傾けていると、色々と声をかけてくる輩が次から次に、中には、露骨な物言いのジェントルマンもいましたね。

 六条楼にいた時とは、別人のようになっている梅香さん。
 現在三十二歳を過ぎていますが、とにかく若く見えます。

 お肌もしっとり、髪もつやつや、上品で淑女、なのにゾクッとする色気が、まとわりついている女性です。

 そんな女性がほんのりほほを染めて、グラスを傾けているのですから、叔父さま方はイチコロでしょうね。
 ただ本人は、そんな気はサラサラありません。

「私は美子様の物、人生を捧げているのですから、言い寄られても困るわ……」
「仕方ないわね、明日からは、チョーカーを見えるようにしなければ……」

更新日:2021-08-04 23:55:34

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