• 21 / 88 ページ

8月8日 白狐夜行

 こんばんは。ごきげんいかがでしょう。
 さて。今夜は祖母に聞いた話をしようかと思いまして。祖母はこういった話に明るいものでしたから、小さい頃からいろいろな話をしてくれました。その中でもよく聞いたのが、何かの神話のような類・・・後から自分でも調べたのですが、結局どこに伝わるどのような話なのかはよくわからないままなのですけれど。ともかく、民間伝承と思わしき話をよく聞きました。そのうちの一つをお話ししようと思います。
 さて・・・何から話しましょうね。どうやら多神教の話で、その話にはいくらか神様の類が出てくるのですが。その中の一柱にヌシャナ様という神様がおりまして。このヌシャナ様は山の獣やあやかしの親なのだそうです。特に犬や狐といったものはヌシャナ様との縁が深いのだとかなんとか。ヌシャナ様自身も、人前に現れるときは白い狐の姿だとされています。
 狐以外にも様々な姿をとるようですが、角があるやら、手足や目が多数あるやら、動物的な特徴があるのはともかく、かなり異様な姿とされることも多いようですよ。祖母が話していたのは、もっぱら狐か犬か、そういった耳や尾のある鬼の姿だとか、そういうものでしたが・・・。ですからヌシャナ様はオニガミ、一般的にキシンと読まれる字で鬼神、だとか、白狐様だとか、そういった呼び名もあるそうですよ。
 まあそれについてはもうよろしい。本題に入りましょう。
 さて。このヌシャナ様がまた厄介な神のようで。なにせあやかしの類の親ですから、ヌシャナ様がいるだけで危険なものが増えます。あやかしでも友好的なものならばいいのですが、異形の姿で生まれてきたものは大概そうではないそうです。野生動物と同じように生き、時には人を食らいます。なので、ヌシャナ様の住む山のそばでは、どうか子たちを山の中へとどめていただくよう、ヌシャナ様に祈りをささげたのだと言います。
 ・・・生贄を差し出した場合もあるそうですよ。月に一度、老若男女問わず、最もよいと思われる者を選ぶのだそうです。食われた贄は食ったものの力となるそうですから、山のものに力が必要だと思われればたくましい若者を、知恵が必要だと思われれば知恵者の老人を、そのほか、求められていると思われる存在を贄としたそうです。当てが外れれば、より求められている者がさらわれ、食われたのだとか。

更新日:2021-08-08 20:49:35

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook