• 16 / 88 ページ

8月6日 赤いかざぐるま

 こんばんは。そろそろ夏祭りの時期でしょうか。
 私が住んでいた町・・・は、複数ありますが、そのうちの二番目ですね。そこでは大概八月の初めに夏祭りがありました。たしか土曜日と日曜日の二日・・・。三日・・・?記憶が定かではありません。ともかく二日か三日続けて、週末にでも催されていたように思います。見に行ったとして花火くらいのものですからもう覚えていません。
 ・・・そういえば夏祭りに関する話がありましたね。せっかく思い出したので今夜はその話にします。
 さて・・・この話をどこで知ったのだったか。ともかくはある女性の体験です。
 彼女には幼馴染の男性がおりまして。小さい頃からよく二人で遊んでいた仲で、夏祭りにも毎年彼と行っていたそうです。まだ小さい頃はそれぞれの家族も一緒でしたが、中学生になる頃には二人きりで行くようになりました。
 いつしか彼女は彼に心惹かれるようになっており、まるで恋人同士のように連れ立って歩くことのできる夏祭りの日を心待ちにしていたといいます。そうしていつか、夏祭りの夜、彼に想いを告げることができたら、などということを考えておりました。
 夏祭りの日には、二人は決まって同じものを買い、同じものを食べました。そうして、毎年何か残るもの・・・といっても、水風船だとか、お面だとか、そういったちょっとした玩具でしたが。それらをお揃いで買うことにしていました。色が決められるものなら、それぞれの浴衣の色に合わせて。例えば高校二年生の夏に買ったのはかざぐるまで、青い浴衣を着ていた彼女は青いかざぐるまを、赤い浴衣を着ていた彼は赤いかざぐるまを、それぞれ買い、その夏の思い出にしました。
 それから、夜店を一通り回ってしばらく経った頃には花火大会がありました。そういうわけで、二人は毎年夜店を回ってしまうと河原へ行き、空を眺めることにしていました。そこは見晴らしがよく、そのうえ空に上がった花火が川の水面に映って、とても幻想的な眺めになるのですが、祭りの会場から離れていることもあり、あまり人の来ない絶好の場所でした。そこで二人は並んで座り、花火が上がるまでは他愛もないことを話し、花火が上がれば二人して美しい景色に見とれ、終わってしまうと名残惜しく思いながらも解散するのでした。

更新日:2021-08-06 20:22:29

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook