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覚醒のうた

蘭佳梨螺(ランカリラ)は、その後、

10年もの間、

暗黒の日々を、

送ることになった。

物事は、ことごとくうまくいかず、

蘭佳梨螺(ランカリラ)の意思を、

すべて、裏切った。

人間関係は、簡単に壊れ、

一瞬にして、粉塵に帰した。

蘭佳梨螺(ランカリラ)の頭はかすみ、

思考する力さえ、

失われていくばかりであるかに、感じられた。

それから、10年もの月日が、経過した、

とある、満月の夜のこと。

不意に、すべての「暗黒の霧」が晴れ、

蘭佳梨螺(ランカリラ)の頭は、眠りから覚めた。

そして、覚醒のときが、ついに、訪れた。

蘭佳梨螺(ランカリラ)の「美」は、蘇り、

それどころか、

うら若き日の、千倍もの輝きで、

光り輝くが如くであった。

蘭佳梨螺(ランカリラ)の、鈍りがちだった、意識にも、

ぱっと明るく、目も眩むまでの光が射し、

思考は、明晰になり、

もはや、蘭佳梨螺(ランカリラ)のまえに、

乗り越えがたき壁などは、

何処にもないかに、感じられた。

蘭佳梨螺(ランカリラ)は、ついに、

その「力」のすべてに、覚醒し、

「空の女神」としての、おのが使命に、目覚めた。

蘭佳梨螺(ランカリラ)は、歌った。

♪わたしの、こころ

♪それは、あの

♪空(そら)

♪そのもの

♪そして、そこには

♪少女の顔をした

♪雲(くも)

♪即ち、

♪わたしの考えが

♪ときどき、

♪漂っている

♪そして、そこには

♪ほかにも

♪いろんな人々の、考えが

♪ときどき、漂う

♪ときには

♪白き、雲(くも)

♪ときには

♪桃色に染まる、雲(くも)

♪ときには

♪灰色の、雲(くも)

♪ときには

♪黒き、雲(くも)

♪ときには

♪のんびりした、雲(くも)

♪ときには

♪荒れ狂う、雲(くも)

♪ときには

♪雨が、降り

♪ときには

♪雪が、降り

♪ときには

♪雹(ひょう)が、降り

♪ときには

♪霰(あられ)が、降り

♪ときには

♪視界が、遮られ

♪ときには

♪方向を、失い

♪ときには

♪台風が、吹き荒れ

♪ときには

♪ハリケーンが、襲う

♪だけど、すべては

♪移り変わる

♪すべては、ほんの

♪いっときの、景色(けしき)

♪青く、澄んだ、空

♪ふたたび、青さが、蘇る

♪そして、また、

♪真っ白な、雲(くも)が

♪浮かぶだろう

♪爽やかな、

♪レモンスカッシュのように

♪ほろ苦く

♪淡く

♪白き

♪雲(くも)が…

更新日:2021-07-30 19:38:00

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