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魔石の舘

空の女神として知られる蘭佳梨螺(ランカリラ)の、

若かりしある日のこと。

うら若き処女(おとめ)蘭佳梨螺(ランカリラ)は、

「魔石の舘」と呼ばれし不思議な舘へと、迷い込んだ。

舘の主は、白く長き、清き光の尾を引く衣を身にまとう、

長身の男だった。

男は、こういった。

「姫よ、よくぞ参られた。

さあ、姫よ、

我が舘の誇れる魔石を、とくとご覧あれ。

姫よ、そなたにふさわしいと思う魔石を、

心のままに、選ぶがよい。

その石を、そなたに授けようぞ。」

蘭佳梨螺(ランカリラ)が、あたりを見わたすと、

そこは一面、こぼれんばかりの

不思議な光を放つ魔石で、満ち溢れていた。

蘭佳梨螺(ランカリラ)は、淡くライラックピンクに光る石

に手を伸ばした。

魔石は、蘭佳梨螺(ランカリラ)の指先にふれると、

嬉しそうに光り輝いた。

男は、こういった。

「姫よ、よくぞ選ばれた。

その石こそは、美をつかさどる魔石。

そなたの行く手は、

永遠の美に、祝福されることであろう。

だが、姫よ、

その石だけでは、

そなたのさだめられし運命には、

まだ、ふさわしくない。

さあ、姫よ、

もうひとつ、石を選ばれるがよい。

そして、姫よ、

その石こそは、

そなたと、わたしの運命を、

末永き絆のもとに、

結びつけることであろうぞ。」

更新日:2021-07-29 05:39:03

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