官能小説

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 問題が起こることはないだろうなどと考えていたら、開式になり、校長先生が話し始めた。
 相変わらず、校長先生は何を言っているのか分からなかった。よくこれだけ意味のわからない話をしょっちゅうできるものだと改めて感心した。却って一生忘れられないかもしれない。前の方の青野の茶色い髪をぼんやり眺めているうちに長い話は終わった。
 それから卒業証書授与になった。これも、緊張していたからか、すぐ終わった。証書を壇上で受け取って、席に戻るとき、フェオソフィエワさんと目が合い、危うく隣の椅子に座るところだった。
「ん?」
 正面を向いてから、ふと気が付いた。フェオソフィエワさんの隣に知らない外国人の女子がいる。
「あの子って、もしかして」
 顔を見ようとして露骨に後ろを向いたら、後ろの席の女子に睨まれた。
 卒業式の後は、学年全体の懇親会が体育館で行われた。と言っても、僕たち生徒は、並べられた物を適当に食べて、それぞれ勝手に喋るだけである。要するに、先生と保護者のための会なのだ。
 僕はフェオソフィエワさんのところに走っていった。サキは来なかったし、青野も佳恵も小薗江も、来る筈がなかった。ほまれさんも、姿が見えなくなっていた。
「わざわざ来てくれてありがとうございます!」
 実際、僕は嬉しかった。
「タツヤクン、オメデトウ。」
 フェオソフィエワさんの前に来ると、いつもそうだが、難しい話は全て忘れてしまう。
「誰か写真撮ってくれないかな。」
「タツヤクン、コノコヲ ショウカイシマス。」
 隣にいた外国人の女の子をフェオソフィエワさんは前に出した。顎くらいまでの金髪の巻き毛の、美少女だった。ただ、心持ち、目の下に隈があり、痩せて弱そうだった。瞳は灰色だ。それがまた陰鬱な印象を与えた。
「ニホンニ クルノガ ユメダトイウノデ ツレテキマシタ。オモイ ビョウキガ アリマス。」
「かわいそうに。」
 日本語はできないようだ。
「タツヤクンノ オウチニ イチネンカン ほーむすていシマス。オトウサンノ カイシャノ ジョウシカラ タノンデモライマシタ。」
「え! でも、言葉とか。」
「タツヤクン、サンニンメノ コニ シナサイ。」
 青野の例のアイデアだ。フェオソフィエワさんは結局、気を回して叶えてくれたらしい。しかし、それがこちらに降りかかると思わなかった僕は
「責任が持てません。」
「コノコノ オヤハ しゃいたーんニ ソソノカサレテ コノコヲ ワタシニ ウリマシタ。ワタシハ タツヤクンニ コノコヲ タダデ アゲマス。オトナノ コトハ ゼンブ マカセテ。ワタシハ オヤニハ ナリマセン。ケッカハ タツヤクント きりすとニ マカセマス。」
「そんな。」
「イイコデスヨ。コマッタラ ワタシニ イッテクダサイ。」
 もう困ってます、と言いたかったが、言ったらこの子は引き取られて殺されるのではないかと思った。僕は初めてフェオソフィエワさんを恐いと感じた。
 けれども目は本当に優しくて
「ワタシノ ネギヲ ワタシハ ハナシマセンヨ。」
「葱って何ですか?」
 フェオソフィエワさんは答えず、僕の頬にキスをして
「ナマエハ そふぃや=ぼぎえわデス。ジャアネ!」
 フェオソフィエワさんは、さっと居なくなった。
 ソフィヤは悲しそうに俯いていたが、僕が手を差し伸べると、力無く握手して返した。

更新日:2021-10-03 08:52:52

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