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ところが、その日の午後から青野の調子が悪くなった。保健室へ行ったら、インフルエンザらしいと言われたそうだ。高熱もあるということだった。
「早引きして、お医者さんに行ってこいって。あたし、帰る時、ついでに餌もやっとくね。」
休み時間に帰り支度をしながら、僕に青野は言った。
「無理するなよ。」
「ありがと。」
青野はここでも嬉しそうに見えた。
それにしても、僕は青野に何でも任せっぱなしなのではないだろうか。ふとそう思った。その後ろめたさから
「餌はいいって。僕がやるよ。」
「いいの。ついでだから。」
頑固な奴である。今やると言うから、付いていくことにした。
鶏小屋の中で餌をやりながら青野は
「村澤の妹、こんなに辛かったんだ。」
「インフルエンザ、流行ってるのかな。」
青野はそれには返さず鶏を見ると
「一羽、羽に怪我してる。朝の話、覚えてる?
「どの話?」
「見てて。」
「何を?」
青野は鶏に手をかざした。そして
「オンカカカビサンマエイソワカ。」
三度繰り返した。
「うっ!」
ゆっくりと、青野のかざしている腕に切り傷が現れた。血も流れている。同時に鶏の羽がきれいに治っていった。僕は驚いた。
「何だよ、これ?」
「すごいでしょ。あたし、『地蔵クラブ』に入ったの。」
何の事だか全く分からない。けれど、そのとき直感した。青野は村澤の妹の身代わりとしてインフルエンザに罹ったのだ。鶏と同じなら、つまり、妹はもう治っていることになる。
「早引きして、お医者さんに行ってこいって。あたし、帰る時、ついでに餌もやっとくね。」
休み時間に帰り支度をしながら、僕に青野は言った。
「無理するなよ。」
「ありがと。」
青野はここでも嬉しそうに見えた。
それにしても、僕は青野に何でも任せっぱなしなのではないだろうか。ふとそう思った。その後ろめたさから
「餌はいいって。僕がやるよ。」
「いいの。ついでだから。」
頑固な奴である。今やると言うから、付いていくことにした。
鶏小屋の中で餌をやりながら青野は
「村澤の妹、こんなに辛かったんだ。」
「インフルエンザ、流行ってるのかな。」
青野はそれには返さず鶏を見ると
「一羽、羽に怪我してる。朝の話、覚えてる?
「どの話?」
「見てて。」
「何を?」
青野は鶏に手をかざした。そして
「オンカカカビサンマエイソワカ。」
三度繰り返した。
「うっ!」
ゆっくりと、青野のかざしている腕に切り傷が現れた。血も流れている。同時に鶏の羽がきれいに治っていった。僕は驚いた。
「何だよ、これ?」
「すごいでしょ。あたし、『地蔵クラブ』に入ったの。」
何の事だか全く分からない。けれど、そのとき直感した。青野は村澤の妹の身代わりとしてインフルエンザに罹ったのだ。鶏と同じなら、つまり、妹はもう治っていることになる。
更新日:2021-05-31 09:05:33