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第6話 蘇る希望


 …そこは、ディーロたちがあの「F91」を運んだ
 「希望の星」内にある「隠れ格納庫」だった。
 内部の照明の約半分が落とされ、あたりは薄暗いが、
 そこには先に運ばれたF91の姿があった。
 肩部にマーキングされた、「F」と「91」の文字が、
 ぼんやりとみえる。

  「ほう…確かにこの機体はガンダムによく似て
  いるな…」

 そう言いながら、アドルはハンガーに固定された
 F91を見上げた。
 その機体のサイズこそひと回りほど小さめだが、
 それはかつてみた、あの「R191」に酷似していた。

  「話では、先にある業者が作り捨てのような形で
  残していったと聞いてます」

 アドルの隣にはディーロの姿があった。

  「ふむ…しかしなぜ、その業者もこんな機体を
  作ったんだろうな…」

 確かにそれは言えることだ。
 その業者にも、何か目的があったに違いないの
 だろうが…そのあたりは不明である。

  「あの…当主代理…」

 ディーロが何かを言いかけた。

  「ン?なんだ?」
  「このガンダム…いえ、F91を整備長に送ることは
  できるでしょうか?」

 …残念ながら、それはまだ判らない。
 なにしろ、アドルのいう「大人物」との会談は、まだ
 これからだからだ。

  「そうだな…」

 アドルは少し難しそうな顔をする。
 「その人を嫌いではない」…さっきディーロに言った
 言葉が思い出される。
 だが…。
 ディーロの想いを実現するため、アドルは
 その人物へ彼の想いを伝えることになる。
 そもそも現在のイムホープ財団には、戦争兵器の
 一つも残されてはいない。
 それは先の通り、それらは既に連邦軍に没収という
 形で引き取られている。
 だが…。

  「せめて記念にあの『フーヴ』くらいは…って、
  それは…駄目ですよね?」

 冗談のつもりだったが…ディーロはそこで口を
 閉ざした。
 アドルに対し、失礼な発言と思ったのだろう。
 しかしこのとき、アドルの顔色が変わっている
 ことに、彼は気づかなかった。

  「まぁ結果がどうであれ、このガンダムはここに
  保管しておこう。それに…うまくいったら
  整備長へ送ることができるかもしれない」
  「はい!…では、よろしくお願いします」

 それからまもなく、ディーロたちは「希望の星」を
 後にした。

更新日:2023-09-02 10:50:32

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機動戦士ガンダム R191 特別編 / 物語を紡ぐもの