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第4話 叶わぬ再会


 ヴィノンたちの艦に突然の砲撃が襲い掛かった。
 …そうなのだ。
 既にダルトたちが、近くまで迫っていたので
 ある…!

  「前方からの砲撃が敵のモビルスーツを直撃、
  大破しました!」
  「味方を撃ったというの!?」

 さっき目の前で、突然ゲルググが爆発したのは
 確認はしていたが…よもや味方のモビルスーツを
 撃ち抜くとは…一体どういうことだ!?
 そんな中、ブリッジ内が一気に緊迫する。
 しかし…。
 さっきの砲撃は、偶然にもヴィノンたちの艦を外れ、
 その直撃を免れていた。

  「敵の数は?」
  「一隻のみです。現在艦内のデータベースと
  照合中…出ました、ジオンの旧式の
  機動巡洋艦です」

 彼女らの目の前に迫る敵の艦は…おそらくは、
 あの「ザンジバル」であろう。

  「整備長たちは一体何を…?」

 艦内の緊張感が高まる中、前方の様子を見守って
 いたヴィノンは、思わず不安げに声を上げた。
 …だが、ルクトたちもそれに当たらなかったのは、
 実に幸いなことである。

 さて、さっきルクトは敵討ちだと言って勝手に
 ジムで飛び出したはず…であったが、それを
 止めようと彼を追ったヨサンもその場で停止、
 あのガンダムとゲルググに接触したまま動いては
 いない。
 そんな中でこちらへと向かっている敵艦からの
 砲撃…。
 さっきから続けざまに起きたあまりの事態に、
 彼女は思わず気が狂いそうになった。

  「アディーナ中尉!ヨサン整備長!そちらで
  一体何が起こっているのですか!?」

 たまらずヴィノンは通信用の受話器に向かって
 叫ぶように彼らに呼びかけた。

  (…こんな時に悪いがヴィノン艦長、実はの…)

 雑音交じりでようやくヨサンからの応答が返って
 くるが、その声がやや沈みかけている。
 …だが、このような事態の中、彼はできるだけ
 手短にその事実を話そうとする…が、そのとき!

  ドウゥッ、ドウゥッ!

 そこに続けざまに敵からの砲撃が開始され、
 いつのまにかマゼランは無数の火線に包まれて
 いた。
 そしてさらにそこへミサイルが撃ち込まれる!

  シュウゥンンッ、…ズズウゥーンッ!!

 後方で何かが爆発する。
 ヴィノンたちのマゼラン…詳しくは、その船体
 後部にモビルスーツを艦載できるように改良
 されたタイプだが、どうやらいまそこへ何かが
 着弾したようだ。

  「後方、モビルスーツ格納部損傷!」
  「被害は!?」

 同時に艦内に警告のアラートが鳴り響く。
 そして、その衝撃で艦が傾いた。

  「いまのショックで開閉ハッチがやられました!!
  これではモビルスーツが出せませんッ…」

 オペレーターが悲鳴のような声を上げた。
 …最悪だった。
 やはりモビルスーツは先に外へ待機させておくべき
 だったか…。
 その予測が見事に外れてしまったヴィノンは、
 自分に平手打ちを喰らわすように、片方の掌で
 その頬を「軽く」打った。
 …と、そこへ再度ヨサンから通信が入ってきた。

  (儂らはの、最初からこのガンダムと接触する
  ことが目的じゃったんじゃよ)
  「え…?」

 ヨサンのその本来の目的が違うことに驚きつつも、
 なぜそのようなことを…ヴィノンは
 この緊急事態の中、ようやく自分が彼らにある意味
 騙されたことに気づいた。
 一方、ヨサンは…?

  (いいか、よく聞け艦長。このガンダムには…
  儂らのかつての仲間が乗っとる。…まぁ詳しくは
  そっちに戻ってから…)

  ドッ…!!

 無数のミサイルが再度撃ち込まれ、その一つが
 マゼランに命中する。
 このままでは…完全にこの艦は沈んでしまう。

  「全砲門開け!前方の敵艦に対し、砲撃開始…」
  「ダメです!まだ射程距離範囲内に入って
  いません。それに…すぐそばに味方の
  モビルスーツがいます!」

 …その方向を間違えればヨサンたちは完全に
 「アウト」だ。
 それにしても…この爺さんたち、そんなところで
 一体何をしてるの!?
 ヴィノンがそう思った次の瞬間…。

  ドッシュウウーンッ、…ドッ、ドッ、ズドッ!!

 …敵艦から連続して放たれたミサイルは、確かに
 ヴィノンたちのいるブリッジ部分に直撃するはず
 …であったが、それが突然、眼前にて閃光を
 放ちながら消滅した。
 どうやら何かが、それを撃ち落とした様だ。

更新日:2022-04-01 20:46:11

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機動戦士ガンダム R191 特別編 / 物語を紡ぐもの