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第3話 ナラティブガンダム

…ヴィノンの予測通り、「それ」は再び姿をみせた。
 「R191」…かつてイムホープ財団が、
 「ピースリヴァイブ」の戦力用にと作り出した
 「RX-78-02」、「ガンダム」であった。
 しかし…先のイムホープ財団の事件で大破し、
 その亡霊かと思われたそれは、姿かたちは似ている
 ものの、どこか作りの違う別物であり、また、
 その詳細は謎に包まれたままであった。

  フッ…

 さっきまで眩いばかりの光を放っていた、
 そのガンダムの全身各所にある透明の装甲が、
 まるで戦いを終えることを知らせるように、
 ぼんやりと淡いピンクへと変わった。

  「…おかしい」

 ヨサンは何かに気づき、前方のガンダムをみやり、
 その後方にみえるゲルググの方へと視線を向けた。
 彼が不審に思ったのは、そのガンダムの挙動
 である。
 たとえば仮にヴィノンたち「連邦軍」を「味方」と
 すれば、ザクなどジオンのモビルスーツは「敵」と
 みなすのが常識だ。
 つまり、ヨサンが不審に思ったその挙動とは、
 ガンダムは最後に一機残ったエティウォールの
 ゲルググを攻撃しようとはせず、ヴィノンたちの
 艦の後方にいたザクを先に狙ったことである。

  「整備長…あれって…」

 ガンダムをみてルクトがそこで言葉を止める。
 あの機体と初めて遭遇した時、聞き覚えのある声が
 呼びかけてきたことを思い出した。
 それは、自分たちのかつての仲間…いや、
 イムホープ財団の当主の娘にして、
 ピースリヴァイブのリーダーであった、
 リムル・イムホープの声であったことに間違いは
 なかった。

  「あれに乗っているのは…まさか…!」

 このときルクトは彼女だと確信する。
 そしてそれは、ヨサンも同じだ。
 彼らにとっては、まさに思わぬ再会というべき
 だろう。

  「うむ…おそらくは…」

 そんな二人を、背後からヴィノンが見守る。
 そして同時に、もしかするとこのガンダムは…
 と、何かを推測し始めていた。
 だが…。
 いまはそんなことにかまっているヒマはない。
 なぜなら、いまは艦長として為すべきことがある
 からだ。
 そんな中、ルクトの心は、密かにあのゲルググに
 向けられていた。
 そしてそれが災いしたのか…!

  「あいつ…!」

 突然ルクトは血相を変えブリッジを飛び出した。

  「…っ!?おいっ、ルクト!!」

 ヨサンはすぐに彼を追った。

更新日:2022-03-11 15:47:11

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機動戦士ガンダム R191 特別編 / 物語を紡ぐもの