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章タイトルくんと本文くんってどういう関係なの?

家を飛び出したお姉ちゃんはほどなくして家に戻った。
いや、連れ戻した。

これには、ボローンによる功績も大きい。
スマポを使えば、相手のスマポを感知して居場所を割り出せるんだもの。
お姉ちゃんってそこのところ頭弱いんだなぁ。

「Aは早く部屋に戻って寝なさい!」

お母さんに強く言われた。

これから、3人でお話しでもするんだろう。僕は知らないけど。









ー翌日ー

「おはよう…」

あの機械音で目覚まされて、さらに焦りからも目覚ましをされた僕のテンションは最悪だ。

「おはよう!」

なぜ、お姉ちゃんは元気なんだろう。








いつもの学校に行く。

授業を受ける。
その間になにかしらのイベントがある。

その全てが…つまんない。

何も引っかからない釣りみたいなもので、川が流れるだけでつまらない。
例え、誰かが釣り針を投げても川がすんなりと返してくるようだ。

ツルツルで清潔。
穢れもない純真。
無邪気で笑顔。

それが、僕ら。

という存在。

と”言われてる”。








僕は体調不良を感じた。

どうしてだろう。どこか気持ちが悪いのだろうか。
保健室で休むことにした。

保健室の先生がしたことは、熱を測って、ちょっとベッドで休んで、お大事に…。
数値とよくある病気による照会の結果、僕はなんのこともない普通だそうだ。

じゃあ、僕が感じるこの気持ちは、きっと”普通”である誰もが持ってるものなのかもしれない。
僕が普通ならば。








「それでさー」

友人のBが喋る。

僕はそれをよく聞く。というか、体調悪いからあんまり喋りたくない。

すると、Bは途端に無口になり、僕の方に目を向ける。

「Aからはなにもないの?」

もしかして、自分一人だけで喋ってるのが、どこか嫌だったんだろうか。

嬉しいけれど、でも、それじゃないような気がする。







家に帰ってくる。

お姉ちゃんがいた。

「…」

さすがに、用もなければ何も言わないか。

トゲのある一言も何も言わず、しんと静まったままリビングを過ぎた。







「さぁ、お出かけに行くぞ!」

お父さんは張り切っている。
なぜなら、今日が僕らと同じ休日で、どこか行くことを予定していたからだ。

「さぁ、どこがいい?」

「…」

「…」

「…」

「おいおい、どうした。何もないのか?」

「…」

「…」

「…」

「…」

4人は黙りこくってしまった。

次第にお父さんがいらだちはじめた。

「な、なんだ! ”せっかく”休みを”削ってまで”、家族サービス”してやってる”ってのに! お前らときたら…!
 そうか、どこも行きたくないのか! じゃあ行かない!」

お父さんはふてくされ、そのままテレビに吸い込まれた。






「何がせっかくよ」

お母さんの愚痴のお時間だ。

僕ら2人がいつも聞かされる。

「自分で何も計画してないくせして、こういう時は人頼み。まったく、頭おかしいんじゃないの!」

それからおもむろにスマポを取り出す。

あぁ、終わりか。

熱心に爪でスマポをバチバチと叩いていた。

「はー、夕飯考えないとじゃん!」







夕飯はあてつけかのように、即席ラーメンになんかを載せたもの。

お父さんはあれからずっとふてくされてる。
けど、自分の優しさを疑うことはないようだ。

お母さんはずっとスマポを操作してる。
自分の役割を果たしたのだから、何も言われる筋合いはないのだと。
スマポはお母さんを守るバリアだった。

お姉ちゃんはにっこり笑ってる。







気持ち悪い。







ふとそう気持ちがわいた自分に罪悪感を抱いた。

そういえば、ネガティブな考えは人生を暗くするんだっけ。

そうだ、ポジティブにいかなきゃ!ポジティブポジティブ…

もしかして、一番ポジティブになれる方法って、頭がバカになることだけ?
何かを忘れて、気付かないまま自分が普通だと思うことだけ?

いや、違うはずだ。

でも、何が違う?

そもそも、何がどう決まってるんだ?

僕がこう思うのも、
相手がこう思うのも、

僕と他人は何が違うんだ?

一緒?
それとも人それぞれ?

僕らの距離は近いくせに、あまりにも遠い。

お互いを傷つけないように、あらかじめ自分をガチガチに守る。

そして、優しさを最初に売る。
その優しさを踏みにじった人が悪いことになる。

でも、やさしさってなんだろう。

もしかしてそれってまるで…






お父さんがこちらを見てくる。

お母さんも。

お姉ちゃんも。









みんなニコニコ笑ってる。









お母さんが言う。

「どうしたのA?

 具合でも悪いの?あら、病気かしら。精神科がいいかも…」

お父さんが言う。

「つまらないならバウンドワンに行こうか!
 それとも、ゲームセンターがいいか?

 そうだ、ビデオでもレンタルしよう!
 コンビニも行くか?」

お姉ちゃんが言う。

「人それぞれでいいんだよ えへへへへへへへへへへへへへへへへへへ」

更新日:2021-03-23 20:04:29

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