官能小説

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心変わり

 いつまで経っても、何をやっても自分自身の経歴ではなく、親や先祖の出自で判断される。そんな世間をぶち壊してやりたくて、今まで生きてきた。一人で乗り越えてきたと思う。信じられるのも自分一人だ。けれども、いつか、どこかに甘やかな安心できる世界が待っている気がしてならない。
 ソジュンは豊子に連れられ、初めて集会所へ来ていた。比較的大きな集まりなので、大仰に紹介されたりはしなかったが、ソジュンはそれに安心していた。もしかすると、自分と関わりのある、もっと言うなら被害者の、若者がいるかも知れないと、麻薬密売人の彼は恐れてもいたからだった。
 統一会と呼ばれたその集まりの中、豊子の見よう見まねでソジュンは祈りを捧げた。
「・・・南無・・・御先祖の諸精霊様・・・」
 ここでも先祖かとソジュンは思った。そもそも、お前らと俺の先祖は違うだろうと内心考えた。それでも自分はここにいる。そして、誰彼の別なく一緒に先祖へ祈りを捧げている。
 所詮ひとは一人だといういつもの思いが頭をもたげた時、隣の豊子の声を聞いて、ふとソジュンは思った。
「あ、関係ねえじゃん。俺の先祖は俺の先祖。他の奴らの先祖は他の奴らの。あっち側にいる先祖の話だ。自分の先祖相手には、自分が祈りゃいいんだよ。自由な話だ。でも、こっち側には豊子さんが俺の隣にいて一緒だ。祈ってる俺たちはみんなで祈ってるんで、一人じゃねえじゃん。」
 何故か、非常に真剣な気持ちでソジュンは祈りたくなってきた。
 祈りの後には食事会があった。ソジュンの周りに座った人々は、初めて参加したソジュンにみな興味を持った。自分の出自をさらけ出しても、人々から何の悪意も向けられなかったソジュンは、気持ちの据え方が分からなくて、むしろ恥ずかしいくらいだった。入会を強制されることもなかった。
「俺、入会してもいいんですかね。」
 豊子は驚いた。
「ソジュンさん、本当? そうなったら、あたし、今いる家を出てソジュンさんと暮らしたい。」
 ソジュンは、先祖の御加護ということを直ぐに思った。暗い人生の裂け目から、明るい薔薇色の景色が覗いたような気がしていた。

更新日:2021-03-26 12:11:43

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