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五日目

 またミコに付き合って図書館に行くことになった。いつから本を漁っているのかは知らないが、そろそろ図書館中のオカルトっぽい本は読み終わる頃なんじゃないかと思うほどにミコは本を読んでいる。それでもイマイチ知りたい話は見つからないらしい。
 ミコが探しているのは、祖母が昔から聞かせてくれる話、なんだと。その婆さんの話がどうも珍しい神話だか伝承だかで、あまり情報がないんだそうだ。何かの神様の話らしいが、俺にはそれしかわからない。断片的な話を聞いても、その類のことに明るくないもんで、さっぱり。それと、たまに出くわしていた変わった出来事について、正体を知りたいとかなんとか。喋る人形、妙なクラスメイト、化けた猫、そんなものについて、近しいもののことでもいいから知りたいそうだ。
 そういうことを話すときだけはこいつも饒舌になる。あんまり熱心なんで、迂闊に話を振れないくらい。たまには聞いてもいいかと思ってはいるが、なかなか機会がない。それに、俺が聞いたって役に立てるようなこともない。そんなわけで、ミコの興味の対象は結局よくわかっていないまま。
 図書館に着くと、ミコはもう目当てのものを決めているらしく、さっさと歩いていってしまう。俺の方では読みたいものもないし、とりあえず後についていこうとして、ふと別なところへ視線をやった。べつに何を意識していたわけでもないはずだが、入り口から見て左側の奥、児童文学の棚あたりに、あの野郎がいるのが見えた。
 思わずちょっと立ち止まると、向こうもこっちに気がついて愛想よく笑いかけてくる。どうするべきか迷ったが、ミコは一人でどこかへ行ってしまったし、この際だから話をしてみることにした。そっちへ足を向ければ向こうも近づいてくる。
「こんにちは」
「どうも」
「ミコト君とご一緒ですか?」
 やけに明るい声で話すやつだ。表情もなんとなく人懐っこい感じで、印象は悪くない。が、二回見た妙な笑みといい、知り合いでもないのに俺のことを知っていたことといい、怪しいやつだということには変わりない。
「まあ、それより・・・」
 適当に濁して話を進めようとすると、相手は急に体をひねった。
「そっちに何か、座れるスペースがあるんですよ。そちらでお話ししません?」
 数冊の本を器用に片手で抱え、もう片方の手で図書館の端にある休憩所みたいなところを示している。
「ああ」
 肯定だかなんだか曖昧な声を出す俺に、相手は子供っぽく笑ってみせた。表情豊かな目が、駄目ですか、と問いかけてきているように見える。
「それじゃ行きましょう」
 声まで子供っぽく、なんとなくうきうきした様子で相手は休憩所へ向かいはじめた。そんな無邪気ですらある振る舞いにどこか拍子抜けしつつ、後についていって、適当な席に座る。

更新日:2021-03-09 20:54:29

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