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小説

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先入観:おばあちゃんのモッキ

挿絵 400*300

一生住む為に家を購入するのではなく、取り合えず現状に合う家を買って住み、状況に応じて売却し、別の家を購入して引っ越す家族は多く、中古物件の売買はネットで得ることができます。

物件紹介に、mummonmökki(ムンモンモッキ、おばあちゃんの小屋)という言葉を見ることがあります。割と広めの土地と、一人あるいは夫婦が暮らすのに最低限の大きさと思われる古い小さな木造住宅です。物件が建てられた物の少ない時代にはそれで十分だったでしょうが、物や家族が増えるにつれて、それを増改築して住居として使ったり、場所によっては余暇の為のモッキとして使ったりされます。

戸建て住宅探しの際に見学会に行ったことのあるmummonmökkiは、一番近い都市オウルの中心地から高速道路を使って三十数kmの所にあり、一千平方メートル強の敷地に母屋は30平方メートル程度で、小さな台所と一部屋あるだけでした。後で作られたと思われるトイレは母屋にありましたが、シャワーはなく、庭にサウナ小屋という、よくあるモッキでした。高速道路が通る前は、森に囲まれた中にポツンと建っていたと思われる田舎の家です。

台所と居間が一緒になったようなtupakeittiö(トゥパケイッティオ)は、古い家には多いです。フィンランド人の家に招かれた時に、居間ではなく台所のテーブルでお茶やおしゃべりを楽しむのは、tupakeittiöの時代からの習慣なのでしょう。日本でもオープンキッチンの家が増えていますが、私は母に「台所はお客様を通す場所ではない」と言われており、フィンランドのその習慣には逆の文化を感じました。今では珈琲消費量世界一と言われ、1日に10杯も飲むとか、午前と午後のコーヒータイムには一切仕事をせずコーヒーを楽しむという話を聞くと、コーヒーがすぐに入れられる台所に集うのは当たり前かもしれません。

普段の生活とは違う休日、特に夏の休暇の数日を過ごすだけなら、mummonmökkiでも、トイレやサウナが別棟でもいいかと思わなくもないのですが、快適な生活に慣れた身には、不便で自然に近い生活はわずかな憧れはあっても、慣れるには時間が掛かりました。私たちのモッキは、mummonmökkiのような小さな家ではなく、今住んでいる自宅よりも大きな昔の民家ですが、生活の不便さは似たようなものです。

もし夫の父親が健在だったとしたら、その民家も空き家になることはなく、常に人が住んで手入れをしているので家屋の状態も違ったと思います。一時的にしか使用しないモッキは、半分物置と化しています。

更新日:2021-02-28 20:01:05

フィンランド、休日田舎暮らし