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先入観:物質としてのモッキ

挿絵 400*300

モッキという言葉を初めて聞いたのは、何十年も前のこと。フィンランドを特集した雑誌記事だったと思います。モッキ(mökki)の単独語ではなく、ケサモッキ(kesämökki)という夏(kesä)と小屋(mökki)を合わせた複合語でした。日本語では「夏の別荘」と訳されることが多いので、夏休み前になると旅行代理店に並ぶパンフレットをイメージしました。

私が日本にいた時は、親の持ち家に住み、祖父母達も市内在住だったので、「田舎のおばあちゃんちへ行く」経験がありません。自宅以外に余暇を過ごす家があることが、ゆとりとか優雅といった印象を持っていました。ある夏、信州に親族共同所有の別荘を持っている知人に招待され、仲間たちと過ごしたことがあります。車でしか行けないような静かな山の中で、当時リゾートマンション流行りの中、やはり戸建別荘の方が落ち着く感じがしました。

雑誌やテレビ等で取材されるモッキはフィンランドの伝統的な質素なログハウスで、水辺に建つサウナ小屋やグリル小屋、屋内には暖炉、という日常とは違うゆったりした生活ができる憧れを感じる物件が多いです。私の持っていたモッキのイメージはメディアから与えられた物で、旅行中訪ねた個人所有のモッキもそれを裏付けるような所ばかりでした。

ログハウスという言葉からは丸太を組んだ木造建築を想像しますが、フィンランドには丸太だけでなく、角材やDログ(片面は丸太で反対面は平らな木材)で組んだ家が古くからあります。私たちの田舎の1950年頃に建てられたモッキも、現在住んでいる築80年を超える自宅も躯体はログでしっかりとした造りです。昔は母屋、サウナ、トイレは別棟でしたが、近代建てられるモッキは一般住宅のように同じ棟に水場も作られます。中には一旦テラスに出て別のドアからサウナに繋がるモッキもあります。下水設備のあるリゾート地区や町に近いところでは水洗トイレ設置が可能、そうでない場合は水ではなくおがくずなどを撒くバイオトイレが外に置かれます。

個人所有のモッキの多くは夏の別荘で、冬の間は全てを止めて眠っていますが、貸し別荘は年間通して使えるように冬も暖房管理されています。夫の親族は毎夏増築や改良等をし、自家発電機だけでなく太陽熱システムも取り入れ、クリスマス休暇も過ごすことができるようにしました。

余談ですが、小さめの住居を謙遜して、モッキ(mökki)ということがあります。古く小さい我が家はまさにそんな感じなので、モッキを二か所持っているようなものです。

更新日:2021-02-21 22:09:35

フィンランド、休日田舎暮らし