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奇妙なコンビ

奇妙なコンビはしばらくのあいだ、世界中を放浪して歩いた。

そのうちに、奇妙なことが起きた。

魔女は忙しく、自分が「女」であることさえ

忘れがちな日々を送っていたのが、

しだいに、エレノワールと似た夢を見るようになってきた。

すなわち、自分のかわいらしさや、

女らしい美貌の夢であった。

しまいに、魔女の頭のなかのほとんどを、

自分のかわいらしさや、美貌にふける想いばかりが

占めるようになった。

すると、それまでストレスに考えていたことまでが

輝いて感じられ、

まるで、「ナルシシズムを呼吸して生きる」がごとく

日々がいきいきとし、みずみずしさを取り戻して

感じられるようになった。

そして、魔女の顔つきやまなざしも、

しだいにやわらいで、かわいらしく可憐になり、

まるで、はるかなる時の流れをさかのぼり、

少女時代へと、帰っていくかのごとくであった。

そして魔女は、こんな言葉をつぶやくのであった。

「わたしは、顔の三分の一までが、瞳」

「わたしの瞳は、ビー玉、宝石、感受性の卵」

「わたしは、世界一有名な、時を駆ける少女」

「世界は、わたしの美しさのためだけにある」

「わたしにしか表現できない、はかない官能性がある」

「Be true to myself, それだけでいい」

「わたしのまえに、ときは、その流れをとどめるだろう。

 さあ、ときよ、とまれ。」

更新日:2021-04-21 16:33:09

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