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7 朗報、そして……

  数日後。
 
「えーと、ここで鼓舞しゅる〜じゃなくて、不屈使って、えーと……あ、妖精さん出すの忘れてた!」
「ちゃんちぃぃぃ!  早くしないと、ナモの無敵終わるぅぅぅー!!」
「全然、良いよ。私……バフ使わずに受けるの好きだから。ふふふ……」
 レイクランドのジョッブ砦の中で、連携を固める訓練ということで、ちーちゃん、牧さん、ナモさんの三人がチームを組んでいたけど、みんなマイペースだった。上手く出来てるかわからないけど、三人とも仲が良いから問題ないと思う。
「さぁ、来るよ……もう来るよ……はい! はい!はい! タンクサンド……タンクサンドォォォー!!」
「じゃっくさん、タンクサンドはダメだって〜! また視聴回数伸びちゃうよ〜!」
 向こう側ではノブさんと最近、暗黒の練習もしてるじゃっくさんが、いくつも並んでいる木人を1つずつ2人で挟む練習をしていた。ある大罪喰いがそういう攻撃をしてくるので、その練習をしているようだけど、見ているわたしからはもうタンクサンドしか印象に残らない光景だった。
 みんなが自分に出来ることを精一杯頑張っている。それを応援してくれる仲間もたくさん出来た。わたしも頑張らないと!
「ふむ、ミゼリの撃つ回数は一段と増えていますし、良い兆候ですね。では、ぷぅこ、次はテンパランスの展開を練習していきましょう」
「はい」
「あやか、君もです。ぷぅことタイミングを合わせて」
「はい!」
 大きな声でPD先生に返事して、ぷぅこの横に並んで杖を構えた。白魔導士の攻撃の主軸になるグレアやミゼリの精度は高いレベルまで上がってきた。次はヒーラーとしての重要な役目、軽減と回復だ。これが出来ないと、パーティの壊滅する可能性が一段と高くなってしまう。
「……」
 ぷぅこは目を閉じて、技の詠唱を始めていた。ずっと隣で練習していたからわかる。ぷぅこはもう充分に戦えるレベルに達している。先生や彼女に直接言われることはないけど、わたしがまだ出来ないことを、ぷぅこが難なくやりこなしているのを何度も見てきた。
 悔しい気持ちがないといえば嘘になる。けれど、それ以上にわたしは嬉しかった。小さい頃からずっと一緒だった親友と、こうして肩を並べられることが。一緒に戦うことが出来ることが、嬉しかった。
「あやか、集中です!」
「はい!」
 だから、遅れを取るわけにはいかない。足手まといにならない。ぷぅこと一緒に戦って、そして……。
「た、大変! 大変! 大変! 大変よ~~~~!!」
 その時、砦の入り口のほうから声が聞こえてきたかと思うと、一台のレガリアが見えてきた。すごいスピードを出していた。門をくぐったところでブレーキのかかる音が響いたけど、レガリアは勢いが止まらず、広場の中央でようやく止まった。
「び、びなこさん、飛ばしすぎですって……」
「あはは、レイさん、ごめんね~」
 助手席に座っているのは、確かラケティカ大森林のほうへ調査に出ていた竜騎士のレイさんだった。戻ってくるのは一週間後のはずだけど……。
「お~、びなさこさんにレイさん! どうした?」
 ノブさんが二人のほうに歩いた。一旦、訓練を中止にして私たちもみんな集まる。
「みんな、聞いて! これは全体未聞のビッグニュースよ。レイさん、説明!」
「こほん……実はラケティカ大森林に潜伏していた大罪喰いを討伐することに成功したんです!」
「ええええええええ!?」
 レイさんの報告を聞いて、驚きの声をあげた。詳しい話を聞くと、肩に大きな剣を背負ったララフェルが、数人の仲間を連れて大罪喰いが潜伏していると思われるキタンナ御影洞を調査。しばらくして帰還し、見事に大罪喰いを倒し、ラケティカ大森林の空に夜を取り戻したという。

更新日:2021-02-03 19:38:11

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