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「あ、びなこさーん! こっち、こっちー!」
 クリスタリウムまで戻ってくると、町の入口の近くに立っていたララフェルの少年が手を振っている。とんがりさんだった。彼は農家で生まれた子で、独自にビニールハウスを作り、ノルヴラント中の野菜を集めて、それを育てている。彼の育てる野菜はどれも新鮮で、みんなから高い支持を集めていた。
「とんがりさん、こんばんは~!」
「こんばんは」
「あっ! あやかさん、ぷぅこさん! こんボルデェェ~~ン!」
 あやかと私が挨拶すると、とんがりさんは元気よく挨拶を返してくれた。あやかと同じで、いつでも明るい子だ。話しているだけで元気がもらえる。
「とんがりさん! 大変です! 牧さんが……」
「ああ、ダメ……ここからデプラスをすると落ちる……アドル、全体攻撃に入れなきゃ……」
 レガリアから降りたちーちゃんが口から泡をふいている牧さんを見て慌てていた。どうやら車酔いしてしまったらしい。
「ああ~牧さん! こうなったら……赤魔導士部隊集合で~す!」
「はーい!」
 とんがりさんの呼びかけに応じてオスラとララフェルの少年が新たに駆けつけてきた。ダイオーさんとフィオールさんの二人だ。とんがりさんと牧さんが結成した赤魔導士部隊の主力メンバー。ダイオーさんはSNSを通じて様々な情報を発進する広告係、フィオールさんはとんがりさんたちの育てた野菜をノルヴラント各地へ運ぶ調達係を担当している。普段はそういう活動をしているけど、いざというときは赤魔導士として救護支援活動もしている。
「迅速ヴァルケアル開始!」
「イエッサー!」
 三人が一斉に詠唱して牧さんへの回復をした。同じ部隊の人に治療してもらうとは、何だか変な感じだ。
「あれま~、牧川、またダウンしちゃったなぁ。あやかさん、ぶこちゃん、おかえり~」
 続いて、私たちのグループのリーダーであるノブさんが歩いてきた。
「ただいま~ノブさん!」
 あやかが飼い主を見つけた子犬のようにノブさんの元へ走り寄った。
「ノブさん、わたし、今日はちゃんとみんなの体力を回復できてね! それで、それで、先生によく頑張りましたねって褒められたの!」
「おーあやかさん、良かったね! ぷこちゃんも今日はお疲れさん! 向こうの広場でシチュー作るからみんなで食べよう」
「わーい! シチュー! シチュー!」
「ふふ……」
 大喜びで飛び跳ねるあやかを見ていると思わず笑ってしまった。

更新日:2021-02-03 19:28:57

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