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3 訓練開始
クリスタリウムを出て北に歩いた先にあるジョッブ砦。ぷぅこと一緒にその入り口まで行くと、門の近くに剣盾を装備したララフェルの女の子が待っていた。
「あ、ナモさ~ん! おはようございます!」
「お、きたきた。二人ともおはよう~!」
わたし達のそばに駆け寄ってきた彼女はナモさん。先生の助手をしていて、メインジョブはナイトだけど、あらゆるジョブを使いこなす天才だった。
「あやかはいつも元気だねぇ。ぷぅこもおはよう~」
「おはようございます」
ぷぅこも頭を下げて挨拶した。わたしと話している時はだらしないことが多いけど、さすがにナモさんや先生の前では真面目になっていた。
「集合時間ギリギリだよぉ~。遅刻したらPDが怒っちゃうから早く行こ」
「はい!」
元気よく返事して、わたしは二人と一緒に砦の中央広場に向かった。
「一、十、百、千、万、億……」
広場の中央で、ぶつぶつとお金の単位をつぶやいている紺色の髪をしたヒューランの女性。間違いない、私たちの師匠PD先生だった。
「先生、おはようございます!」
「兆、京、がい、じょ、じょう……」
「先生?」
「溝、澗、正、載、ごくぅぅぅぅぅ!」
「どひゃああ!?」
急に先生が大きな声で言ったので、わたしもぷぅこも驚いて変な声を出してしまった。ナモさんだけ何も言わずにニヤニヤ笑っている。
「……こほん。あやか、ぷぅこ、おはようございます」
何事もなかったかのように先生は咳払いをして挨拶した。
「お、おはようございます、先生!」
「おはようございます」
わたしもぷぅこも頭を下げて挨拶した。
「あやか、君はいつでも元気ですね。日々の訓練にも懸命に取り組んでいる。先生は嬉しいですよ」
「ありがとうございます!」
「そしてぷぅこ。君もしっかり頑張ってもらっているようですが……その顔、またお酒飲みましたね?」
「ぎくっ!」
ぷぅこはうまくごまかそうとしていたようだけど、先生にはお見通しのようだった。
「別にお酒をやめろとは言いません。私も嗜む程度にはお酒を飲みますから。ですが! 飲みすぎてあやかや店員さんにご迷惑をおかけしないようにしてもらいたいですね」
「……気を付けます」
ぷぅこは顔を真っ赤にして頭を下げた。
「うむ、良い心がけです。さて、開始まであと5分ですが、あとのメンバーは……」
「ココココココーーーーー!」
「あああああああ、デプラスミスったぁぁぁぁー!」
このニワトリのような声と、デプラスの叫び。聞き間違えるはずがない。あの二人だ。プロのフィギュアスケート顔負けの豪快な滑りでその二人がわたしたちと先生の間に滑り込んだ。ララファエルの女の子とメスッテのコンビ。最近、白魔導士から学者に転職したちーちゃんと、デプラスを極めることに命をかけている牧さんだった。
「あの~その~すいません! 牧さんが家を出る直前にお腹壊して、あのそれで……」
「いや、あの僕は何も悪いことしてませんよ! ちゃんちーがスモークチキンをどうしてもやけ食いしたいっていうから、ノブさんやエトさんたちに頼んで大量に注文してしまったせいで……」
「二人とも、おはようございます」
「あ、PD……怒ってる?」
「おはよう」
にっこり笑いながら挨拶するPD先生。怒っているような雰囲気がわたしからも感じ取れた。ちーちゃんも牧さんもそれ以上何も言えずに固まってしまった。
「うふふ、PD、良い笑顔……踏んでほしい」
そんな先生に約1名ナモさんだけうっとりしているようだったけど、先生はそれに触れず、こほんと咳払いした。
「さて、気を取り直して。皆さん、おはようございます。この訓練も始めてから長い年月が経ちました。光の氾濫から100年。ノルヴラントでは今でも罪喰いによる被害が後を絶ちません。けれど、私は信じています。皆さんが必ず立派な冒険者になって、罪喰いたちを倒してくれることを。だから、今日も頑張りましょう」
「……」
わたし達は何も言わずに黙って頷いた。みんな同じ気持ちだった。もう実践経験は積んで罪喰いとは何度も戦ったけれど、それが怖くないと言えば嘘になる。でも、誰かが犠牲になって、新たな罪喰いになる光景を出来るだけ早く見ないようにしたい。そのためには戦う力が必要だ。だから、先生の厳しい訓練を日々頑張っている。
「さて、今日は全体攻撃への対策のための訓練をしますよ。罪喰いの攻撃は一個人に対してだけではありません。牧さんのアドル、ちゃんちーの鼓舞、そして、あやかとぷぅこの回復。これらが一つでも欠ければパーティの壊滅もありえます。では、早速始めましょう!」
「はい!」
こうして今日の訓練が始まった。
「あ、ナモさ~ん! おはようございます!」
「お、きたきた。二人ともおはよう~!」
わたし達のそばに駆け寄ってきた彼女はナモさん。先生の助手をしていて、メインジョブはナイトだけど、あらゆるジョブを使いこなす天才だった。
「あやかはいつも元気だねぇ。ぷぅこもおはよう~」
「おはようございます」
ぷぅこも頭を下げて挨拶した。わたしと話している時はだらしないことが多いけど、さすがにナモさんや先生の前では真面目になっていた。
「集合時間ギリギリだよぉ~。遅刻したらPDが怒っちゃうから早く行こ」
「はい!」
元気よく返事して、わたしは二人と一緒に砦の中央広場に向かった。
「一、十、百、千、万、億……」
広場の中央で、ぶつぶつとお金の単位をつぶやいている紺色の髪をしたヒューランの女性。間違いない、私たちの師匠PD先生だった。
「先生、おはようございます!」
「兆、京、がい、じょ、じょう……」
「先生?」
「溝、澗、正、載、ごくぅぅぅぅぅ!」
「どひゃああ!?」
急に先生が大きな声で言ったので、わたしもぷぅこも驚いて変な声を出してしまった。ナモさんだけ何も言わずにニヤニヤ笑っている。
「……こほん。あやか、ぷぅこ、おはようございます」
何事もなかったかのように先生は咳払いをして挨拶した。
「お、おはようございます、先生!」
「おはようございます」
わたしもぷぅこも頭を下げて挨拶した。
「あやか、君はいつでも元気ですね。日々の訓練にも懸命に取り組んでいる。先生は嬉しいですよ」
「ありがとうございます!」
「そしてぷぅこ。君もしっかり頑張ってもらっているようですが……その顔、またお酒飲みましたね?」
「ぎくっ!」
ぷぅこはうまくごまかそうとしていたようだけど、先生にはお見通しのようだった。
「別にお酒をやめろとは言いません。私も嗜む程度にはお酒を飲みますから。ですが! 飲みすぎてあやかや店員さんにご迷惑をおかけしないようにしてもらいたいですね」
「……気を付けます」
ぷぅこは顔を真っ赤にして頭を下げた。
「うむ、良い心がけです。さて、開始まであと5分ですが、あとのメンバーは……」
「ココココココーーーーー!」
「あああああああ、デプラスミスったぁぁぁぁー!」
このニワトリのような声と、デプラスの叫び。聞き間違えるはずがない。あの二人だ。プロのフィギュアスケート顔負けの豪快な滑りでその二人がわたしたちと先生の間に滑り込んだ。ララファエルの女の子とメスッテのコンビ。最近、白魔導士から学者に転職したちーちゃんと、デプラスを極めることに命をかけている牧さんだった。
「あの~その~すいません! 牧さんが家を出る直前にお腹壊して、あのそれで……」
「いや、あの僕は何も悪いことしてませんよ! ちゃんちーがスモークチキンをどうしてもやけ食いしたいっていうから、ノブさんやエトさんたちに頼んで大量に注文してしまったせいで……」
「二人とも、おはようございます」
「あ、PD……怒ってる?」
「おはよう」
にっこり笑いながら挨拶するPD先生。怒っているような雰囲気がわたしからも感じ取れた。ちーちゃんも牧さんもそれ以上何も言えずに固まってしまった。
「うふふ、PD、良い笑顔……踏んでほしい」
そんな先生に約1名ナモさんだけうっとりしているようだったけど、先生はそれに触れず、こほんと咳払いした。
「さて、気を取り直して。皆さん、おはようございます。この訓練も始めてから長い年月が経ちました。光の氾濫から100年。ノルヴラントでは今でも罪喰いによる被害が後を絶ちません。けれど、私は信じています。皆さんが必ず立派な冒険者になって、罪喰いたちを倒してくれることを。だから、今日も頑張りましょう」
「……」
わたし達は何も言わずに黙って頷いた。みんな同じ気持ちだった。もう実践経験は積んで罪喰いとは何度も戦ったけれど、それが怖くないと言えば嘘になる。でも、誰かが犠牲になって、新たな罪喰いになる光景を出来るだけ早く見ないようにしたい。そのためには戦う力が必要だ。だから、先生の厳しい訓練を日々頑張っている。
「さて、今日は全体攻撃への対策のための訓練をしますよ。罪喰いの攻撃は一個人に対してだけではありません。牧さんのアドル、ちゃんちーの鼓舞、そして、あやかとぷぅこの回復。これらが一つでも欠ければパーティの壊滅もありえます。では、早速始めましょう!」
「はい!」
こうして今日の訓練が始まった。
更新日:2021-02-03 19:25:45