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11 明かされる過去

 五年前。コルシア島。トメラの村。
 
「よ~し! お前ら! 今日も張り切って仕事頑張るぞぉ! ラリホー!」
「ラリホー!」
 つまらない人生。毎日が同じことの繰り返し。
「声が小さい! ラリホォォォォー!」
「ラリホー!」
 朝起きて、挨拶して、仕事して、ご飯食べて、寝て、また朝が来て……そんな日々の繰り返し。まだ子供だったのに、私はこの時既に普段の日々に退屈を感じていた。周りにいる大人も、子供もみんな同じ兜や鎧をつけて、元気よく採掘へ出かけていくけれど、私はとてもあんな気軽に仕事へ行けなかった。この小さな村で毎日同じことばかりして一生を終えるんだ。
「……」
「もう~本当にいつもいつも、つまらないね」
「……え?」
 隣から声が聞こえてきて、視線を向ける。もちろん兜で顔は見えなかったけど、声は女の子だった。背も私と同じくらい。おそらく、歳もそんなに変わらないだろう。
「あなたもそう思うでしょ?」
「私?」
「うん。何となくわかるよ。わたしとあなた、何だか似ているもん!」
「……」
 それがあやかと初めて交わした言葉だった。
 あやかは私と正反対な性格だった。いつも明るく元気で、他の子たちともすぐに打ち解けることが出来る。一方の私は控えめな性格だし、さっきみたいにどこか冷めている部分もある。私なんかと話してて、楽しいわけがない。
「ぷぅこ! ぷぅこってば!」
「どうしたの、あやか?」
「お母さんがまた面白い絵本見つけてくれたの! 一緒に読もうよ!」
 でも、あやかは私にたくさん話しかけてくれた。毎日仕事が終わってから家に帰るまでの時間。それほど長くはないけれど、あやかはいつも色んな話をしてくれる。絵本のこと、家族のこと、お母さんの作ってくれた料理のこと、外の世界のこと。どれも聞いたことがない話だった。
 明日はどんな話をしてくれるんだろう。つまらなかった私の人生に大きな楽しみが出来た。そして何より、色々な事を楽しそうに話してくれるあやかが私にとってかけがえのない友達になった。
「ねえ、あやか」
「ん? どうしたの、ぷぅこ?」
「どうして、あやかは私に色んな話をしてくれるの? 私は特に何か出来る訳じゃないし、いつも色々な話をしてくれるのはあやかだけ。聞いてばかりのいる私と一緒じゃつまらなくないの?」
 知り合ってしばらく経った時に前から思ってたことを私は思い切って聞いてみた。誰とでもすぐ仲良くなれるあやかがわざわざ私に話しかける必要はないはずなのに……。
「だって、ぷぅこは……」
 あやかは私のほうを見て言った。
「ぷぅこはわたしと同じ、外の世界へ行きたい気持ちを持っているから。それに、ぷぅこはちゃんと話を聞いてくれる唯一の友達だよ」
「え?」
「他の子と話をすることはもちろんあるよ。けれど、みんな一人ぼっちが嫌だからとりあえずちょっと話が出来るぐらいの人を探してるだけ。話してて、何となくわかるの。みんな、本当の自分を隠してる。本当の自分を表に出して、みんなから離れられるのを怖がっている。でもね……」
 あやかは私に笑った。
「ぷぅこは……ぷぅこだけには本当のわたしを見せられるの」
「本当のあやか?」
「うん。だって、外の世界に行きたいなんて、他の人に言ったら大変なことになるでしょ。一族代々ずっとこの村で生活していたから。けど、ぷぅこはちゃんとわたしの話を聞いてくれたし、わたしと同じ気持ちを持っている。外の世界に行きたいって気持ちが」
「……」
 言葉が出なかった。何も言えなかった。けれど、胸の奥が熱くなった。
 嬉しい……嬉しかった。私のことをそんなふうに思っていてくれて、嬉しかった。
「……ありがとう、あやか」
「それはわたしのセリフだよ、ぷぅこ。あ、そうだ!」
 何か閃いたのか、あやかは立ち上がった。
「ぷぅこ、お母さんが言ってたんだけど、村の南のほうに大きな崖があって、その向こうに海や町が見えるんだって」
「海や町?」
「うん! わたしも見たことなくて、今度仕事抜けて行ってみない?」
「え、で、でも……」
「見つかったら、その時はその時! 一緒に怒られよう! 大丈夫だって!」
「一緒に怒られようって……」
 思わず笑ってしまった。あやかと話をしていると面白くて、つい笑ってしまう。危ないことを言っているはずなのに、あやかが言うと何でも出来るような気がした。
「わかった」
「ほんと!? くぅ~~~~ありがとう、ぷぅこ! わが友よ~~~!」
「ちょっ! あやか! うわっ!」
 嬉しさのあまり私に抱きついてきたあやかを受け止めることが出来ず、一緒に倒れてしまった。

更新日:2021-02-03 19:52:14

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