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「過去を詮索するのを躊躇って、お前たちは一歩踏み出せないようだが、今回の件はそうも言ってられないだろう。本人の口からきちんと話を聞くべきだ。そしたら見えなかったものを見えてくるだろう。お前たちが私たちアシエンと向き合ったように」
 だんだんとエメトセルクの話す口調が本気になっているように思えた。けれど、そのあとに怪しく笑う。
「やれやれ、一つと言いながら、いくつか重大なヒントを与えてしまったようだな。あとは直接聞いてみるといい。しばらく時間の空いた今なら聞けるはずだ。ではな」
「どうして……」
 歩き去ろうとするエメトセルクを牧さんが呼び止めた。
「どうして、俺たちにそれを教えるんだ? お前にメリットはないはずなのに、どうして?」
「ただの気まぐれだ。期待しているやつが戦う前から気力を失くしていたらつまらんからな……。もう長い間、人の歴史を見てきた。私はそろそろ見つけたいんだよ。自分より劣っていたとしても、ひとときの痛みに耐えるそんな強い心を持った相手を。たとえ、それがほんのわずかな可能性だとしても……な」
 そう答えるエメトセルクの口調は悲しいような、寂しいような感情が混じっているように聞こえた。
「ああ、厭だ、厭だ。やっぱり他人のおせっかいをするのは面倒だ。せいぜい、頑張ることだな」
 言い終わると、エメトセルクは手を振りながら姿を消した。
「……」
 そうだ。直接聞いてみないとわからないこともある。ぷこさんの気持ちを知らないと。
「牧さん、ぷこさんのとこに行ってみよ」
「ちゃんちー……」
「誰かが踏み出さないと何も変わらないから」
「……わかった」

更新日:2021-02-03 19:49:34

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