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 ミーン工芸館。クリスタリウムの中でギャザクラの聖地とも呼ばれている場所。ここでは毎日ようにコーヒークッキーの納品が行われていて、ギルやマテリジャが常に飛び交っている。
「はい、クライさんの禁断終わったよ〜」
「ノブさん、ありがとうございます!」
「次は……エトさんかな?」
 そんな中、リテイナーの呼び鈴の近くで新しい装備にマテリジャ禁断をしているノブさんがいた。どうやら、クライさんの装備の禁断を終えて、次はエトさんの装備を禁断するらしい。
「私のおはぺろの魂の籠った刀、ノブさんにお預けします」
「ほーい、じゃあ、パパっとやろうかな」
 エトさんの差し出した刀を受け取ると、ノブさんはどこからともなく金槌を取り出した。
「あー我が名はちゃんのぶ。あー我が友、アドキラーの加護により、この手に握る金槌にサラヌールの力を宿し、打ち込んでみせよう。オールハイルチャンノブ……おういえ〜!!」
 ノブさんが叫んだ瞬間、頭上に大量の武略のメガマテリジャが現れた。ノブさんが金槌を振ると、そのマテリジャ全てがエトさんの刀に吸い込まれた。
 ぼんぼん、とマテリジャの砕ける音が何度も鳴った後に、刀が大きな輝きを見せた。
「お、10個でハマった。ほーい、エトさん」
「ノブさん、ありがとうございます」
 さすが禁断に愛されし師匠。彼に新式作成と禁断を任せたら、右に出る者はいない……ってそうじゃなくて!
「いやー相変わらずノブさんの禁断はすぐハマるね〜」
 隣に立っていた牧さんがそう言うと、ノブさんは私たちのほうを見た。
「お~ちゃんちーと牧川、おはよう」
「おはようございます~」
「今日はどうしたんだい?」
「実はノブさんにお話が……」
「……ああ、あのことか」
 ノブさんがそういうと、察してくれたのか、その場にいたクライさんとエトさんは一礼して居住館のほうへ戻っていった。
「よっこいせっと」
 ノブさんは近くのベンチに腰を降ろした。私と牧さんもその隣に座る。
「顔見たらすぐわかったよ、あやかさんとぷこちゃんのことでしょ?」
「お察しの通りです。さすが、ノブさん」
 牧さんがそういうと、ノブさんは苦笑いを浮かべた。
「いや~それにしても困ったもんだね。何とかしたい気持ちはもちろんあるよ。あの二人の面倒をちゃんと見てほしいってある人から頼まれてるし」
 頭をかきながら、ノブさんが言った。ある人というのは恐らくサンクレッドさんの事だろう。その話はらぎさんからも出ていた。
「その……サンクレッドさんって人が、二人を保護して、クリスタリウムに来たんですよね?」
「あれ、誰かから聞いたの? あんまり他の人に話さないように言われてたんだよ。ほら、うちのメンバー色んな事情があって、この町に来た人が多いから、過去の事を詮索するとトラブルの原因になるかもしれないし……」
 ノブさんは空を見上げた。
「人間関係って難しいな~。新式作ったり、禁断してるほうがまだ楽なんだけどね~」
「何か良い方法は思いつきませんか?」
「素直にお互いが謝れば済む話だと思うけど、俺らが強制するのもどうかなと思う。お互いに向こうが悪いから自分が謝ることはないと思ってたら、このままの状況が続いてしまうと思うし」
「そんな……」
「もちろん、俺も何とか仲直りしてほしいと思うよ。大罪喰いの討伐、みゅう晶公から直接頼まれてるし……上手い方法が思いつけばな~」
 ノブさんは困ったような表情をした。多分、私や牧さんと同じくらいのぶさんも悩んでいて、良い答えが出ないのだろう。
 私たちはしばらく座ったまま、ずっと悩んでいた。

更新日:2021-02-03 19:47:15

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