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9 みんなの思い
まず初めに向かったところは彷徨う階段亭だった。ぷこさんがよくお酒を飲んで寝ていることが多いけど、今回は……。
「ナモ飲みすぎだって。明日に響くよ~」
ウェイターのらぎさんが何やら困った様子だった。
「ふっふ~、大丈夫だって~。もう~らぎさんは心配性なんだから」
「やれやれ、もう完全に酔ってますね、これは……」
テーブル席に座っているのはナモとPDの二人だった。机の上には木製のジョッキがいくつも散らかっている。そして、顔を真っ赤にしているナモ。何があったのか、一目瞭然だった。
「ナモが飲みすぎるなんて、珍しいな」
「あ~牧川、ちゃんちー」
らぎさんが最初に私たちに気づいた。
「らぎさん、ナモ、PD、おはようございます!」
三人に挨拶する。ナモはうふふ、と笑いながらジョッキをあげて、PDは手をあげて会釈した。
「PD、ナモ、今日はどうしてここに?」
牧さんが聞くと、PDはため息をついた。
「ナモが朝から飲みたいっていうから仕方なく……というのは建前。実際はイル・メグへの討伐部隊の編成に難航しているのが本音です」
「……あやかさんとぷこさんですよね?」
私がそう聞くと、PDは黙って頷いた。
「あ~そういえば、あの二人、最近見ないね~。何かあったの?」
「実は……」
らぎさんに先日あった事を詳しく話した。
「……なるほどね~あの二人が喧嘩するなんて、珍しい」
事の次第を聞いたらぎさんはそう言って、呆れたようにため息をついた。
「それでナモはやけになって飲んでたってわけね。全く……あんたらがあの二人の面倒ちゃんと見てあげなくてどうすんのよ」
「うへへ……そう言われましてもね」
「もちろん、このままにしておくわけにはいかないと思っていますけどね……」
どうやら、ナモもPDも色々と悩んだ結果、今の状態になっていたらしい。二人から解決方法を聞くのは難しそうだった。
「らぎさんは二人が仲直りする方法、何か思いつきます?」
「う~ん、いざ聞かれると難しいわね~。あの子たちがクリスタリウムに来る前に何をしていたのか、あの人に聞かずじまいだったし」
「あの人?」
牧さんがそう聞くと、らぎさんは「あ~そういえば、話したことなかったわね~」と言った。
「もう五年前になるわね~。白髪の若い男だったわ。背中にガンブレードを背負った人でね。名前は……確か、サンクレッドって言ってたかしら。彼、この町に来てこの子たちの面倒を見てあげてほしいって頼んできたのよ。それがあやかとぷぅこ。二人とも傷だらけでね~。ノブさんたちのおかげで治療してもらって、それ以来、二人の面倒を見ているってわけ」
「その……サンクレッドさんって人は?」
「二人を預けてしばらくいたんだけど、二年ぐらい経った時にこの町を出ていったのよ。本当に優秀なガンブレイカーの人だったから、あたしもノブさんもずっとこの町を守っていてほしいって言ったんだけどね、彼『俺にはやるべきことがある。あの二人はきっと自分たちの足で前に進めるさ』って言ってたわ」
「そんなことが……」
三年前ということは、私たちがまだこの町に来る前のことだったから、知らなかった。ノブさんたちのチームに新しい人が入ることはよくあることで、色んな人と知り合うことが出来て、私は嬉しかった。けれど、みんなそれぞれ過去に大変なことがあったから、この町に来ている。中には触れてほしくないこともあるだろう。だから、みんな極力、他の人の素性に探りを入れないようにするのが、暗黙の了解でもあった。
「そして私がノブさんから二人の訓練を担当してほしいと言われました」
PDはテーブルの上に置かれたコーヒーを口につけた。
「あやかもぷぅこもヒーラーに適正があったので、回復や治癒に詳しい私が適任だと。ナモにも手伝ってもらいました」
PDはコーヒーをテーブルの上に置いた。
「そしてようやく、二人の息が合ってきて、これなら大罪喰いとも渡り合える……そう思っていたんですけどね」
「……」
PDの気持ちはよく伝わってくる。だからこそ、私はそれ以上聞くことが出来なかった。
「ナモ飲みすぎだって。明日に響くよ~」
ウェイターのらぎさんが何やら困った様子だった。
「ふっふ~、大丈夫だって~。もう~らぎさんは心配性なんだから」
「やれやれ、もう完全に酔ってますね、これは……」
テーブル席に座っているのはナモとPDの二人だった。机の上には木製のジョッキがいくつも散らかっている。そして、顔を真っ赤にしているナモ。何があったのか、一目瞭然だった。
「ナモが飲みすぎるなんて、珍しいな」
「あ~牧川、ちゃんちー」
らぎさんが最初に私たちに気づいた。
「らぎさん、ナモ、PD、おはようございます!」
三人に挨拶する。ナモはうふふ、と笑いながらジョッキをあげて、PDは手をあげて会釈した。
「PD、ナモ、今日はどうしてここに?」
牧さんが聞くと、PDはため息をついた。
「ナモが朝から飲みたいっていうから仕方なく……というのは建前。実際はイル・メグへの討伐部隊の編成に難航しているのが本音です」
「……あやかさんとぷこさんですよね?」
私がそう聞くと、PDは黙って頷いた。
「あ~そういえば、あの二人、最近見ないね~。何かあったの?」
「実は……」
らぎさんに先日あった事を詳しく話した。
「……なるほどね~あの二人が喧嘩するなんて、珍しい」
事の次第を聞いたらぎさんはそう言って、呆れたようにため息をついた。
「それでナモはやけになって飲んでたってわけね。全く……あんたらがあの二人の面倒ちゃんと見てあげなくてどうすんのよ」
「うへへ……そう言われましてもね」
「もちろん、このままにしておくわけにはいかないと思っていますけどね……」
どうやら、ナモもPDも色々と悩んだ結果、今の状態になっていたらしい。二人から解決方法を聞くのは難しそうだった。
「らぎさんは二人が仲直りする方法、何か思いつきます?」
「う~ん、いざ聞かれると難しいわね~。あの子たちがクリスタリウムに来る前に何をしていたのか、あの人に聞かずじまいだったし」
「あの人?」
牧さんがそう聞くと、らぎさんは「あ~そういえば、話したことなかったわね~」と言った。
「もう五年前になるわね~。白髪の若い男だったわ。背中にガンブレードを背負った人でね。名前は……確か、サンクレッドって言ってたかしら。彼、この町に来てこの子たちの面倒を見てあげてほしいって頼んできたのよ。それがあやかとぷぅこ。二人とも傷だらけでね~。ノブさんたちのおかげで治療してもらって、それ以来、二人の面倒を見ているってわけ」
「その……サンクレッドさんって人は?」
「二人を預けてしばらくいたんだけど、二年ぐらい経った時にこの町を出ていったのよ。本当に優秀なガンブレイカーの人だったから、あたしもノブさんもずっとこの町を守っていてほしいって言ったんだけどね、彼『俺にはやるべきことがある。あの二人はきっと自分たちの足で前に進めるさ』って言ってたわ」
「そんなことが……」
三年前ということは、私たちがまだこの町に来る前のことだったから、知らなかった。ノブさんたちのチームに新しい人が入ることはよくあることで、色んな人と知り合うことが出来て、私は嬉しかった。けれど、みんなそれぞれ過去に大変なことがあったから、この町に来ている。中には触れてほしくないこともあるだろう。だから、みんな極力、他の人の素性に探りを入れないようにするのが、暗黙の了解でもあった。
「そして私がノブさんから二人の訓練を担当してほしいと言われました」
PDはテーブルの上に置かれたコーヒーを口につけた。
「あやかもぷぅこもヒーラーに適正があったので、回復や治癒に詳しい私が適任だと。ナモにも手伝ってもらいました」
PDはコーヒーをテーブルの上に置いた。
「そしてようやく、二人の息が合ってきて、これなら大罪喰いとも渡り合える……そう思っていたんですけどね」
「……」
PDの気持ちはよく伝わってくる。だからこそ、私はそれ以上聞くことが出来なかった。
更新日:2021-02-03 19:44:02