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1 あの日の約束

 五年前。コルシア島。トメラの村。
 
 それほど長い時間を生きてきたわけじゃないけれど、自分の人生がこんなにつまらないなんて思いもしなかった。朝早くに起きて、村のみんなに「ラリホー!」って挨拶しに回ってから、ずっと遅くなるまで採掘の仕事をして、ご飯を食べて、寝て、また起きての繰り返し。
 仕事には慣れてきたけど、このまま一生を終えるまで私はここで暮らしていくと思うと、何だか虚しい気持ちになった。
 そんな私の唯一と言っていい楽しい時間は、仕事が終わった日の家に帰る前に、彼女と話をしている時だった。
「ねぇねぇ、ぷぅこ! ぷぅこってば!」
「ん、どうしたの、あやか?」
 ぼんやりと空を見上げていると、隣に座っていたあやかが話しかけてきた。
「昨日、お母さんが話していたんだけど、すっごく昔、この世界には夜っていうのがあったんだって!」
「夜?」
「太陽が沈んで空が真っ暗になるんだって!」
「何よ、それ?」
 苦笑いしながら、空を見上げる。相変らず空は光に包まれていた。100年前に起こった光の氾濫以来、この世界から闇は消えたままだ。そんな話を小さい頃、村の最長老から聞いた覚えがある。
「それで、それでね、いつか闇の戦士が現れて、この世界から光を追い払って夜を取り戻してくれるんだって。そしたら、星空もきっと見えるよ!」
「星空?」
「真っ暗な空にキラキラ光る宝石がいっぱい見えるんだって! いいなぁ~、絵本でしか見たことないから、私も見てみたいよ~!」
 そう話すあやかの目もキラキラ光っていた。この子は本当に色々な表情を見せてくれるから話してて飽きなかった。
「ねえ、ぷぅこ! いつか、この空に夜が戻ったら、二人で星を見に行こうよ! それで、二人でこの村を出て冒険しよう! 世界中へ!」
「え、私も行っていいの?」
「当たり前だよ! だって、私たち、ずっと友達だもん!」
 そう言ってあやかは笑顔を見せてくれた。私は急に恥ずかしくなって顔を背けた。
 嬉しかった。こんなつまらない時間ばかりが永遠に続くと思っていた私のことを友達と呼んでくれたあやかの気持ちがとても嬉しかった。
「じゃあ、ぷぅこ! 約束!」
 あやかが小指をたてて、私のほうに向けた。
「う、うん」
 私も小指を差し出して、約束を交わした。
 
これは世界を救うなんて壮大な話じゃないけれど、二人のララフェルの織り成す友情の物語です。

更新日:2021-02-03 19:22:46

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