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禁じられた書

 金のコウモリの魔女『ソワンボワーズ』を尾けてくる『闇』は

 概ね邪悪であり、たまに『励ましの言葉』を、

 気まぐれに口にすることもあった。

 彼らは、魔女に興味をもつようでいて、

 本質を理解せんとするではなく、

 ただいたずらに、魔女とその周りに引き起こされる出来事を

 気まぐれに追う、古え(いにしえ)より生息する

 『セイレーン』がごとくであった。

 その『闇』は、魔女が心をかき乱されすぎることさえなければ、

 『実害』を加えてくることもなく、ただ魔女の行く手には、

 『未知なる暗がり』と『未知なる世界』のみが

 どこまでもうっすらと、横たわっていた。

 かくして『旅の仲間』は、夜の薄闇を、

 箒のひと飛びで乗り越えながら、

 流浪の旅路を『先へ』と進んだ。

 旅を始めて5日目の夜、ふたりの魔女とひとりの魔法使いは、

 ナイジェリアの荒野のなかに、ぽつんと取り残されたがごとく

 聳える、いまでは廃墟と化した、とある校舎に降り立った。

 そこには、古ぼけた黒い帽子とローブを身にまとった、

 背の高い老人が佇み、

 一行を待っていた。

 『ようこそおいでくだされた、伝説の魔女、

  ソワンボワーズどの。

  おお、これはこれは、マーリンどの、

  ようこそおいでくだされた。

  そちらのお若い魔女は、ルナどのであるかのう。

  お初にお目にかかりますぞ。

  さあさあ、お待ちしておりましたぞ。

  お約束のものを、今日こそ、お伝えいたしましょう。』

 老人は、古ぼけた羊皮紙を取り出して、そろそろと広げてみせた。

 ぼろぼろになった紙に、蛇に似た聖獣の紋章が描かれ、

 古代エルフ文字に一見よく似ているが、

 これまでに見たこともないような、 

 不思議な古代文字が、ぽつぽつと並んでいた。

 『”禁じられた書”をお渡しいたそうぞ、ソワンボワーズどの。

  時いたりしとき、ここに記されし”禁じられた呪文”が

  読み解ければ、

  お役にたつことでありましょうぞ。

  しかしながら、その時いたるまでは、

  この書に記されし呪文は、

  ひたすら、そこもとの胸のうち深くに秘め、

  決して、その”力”を借りんと試みてはなりませぬぞ。

  それでは、幸運を祈りますぞ、ソワンボワーズどの。

  マーリンどの、ルナどの、あとは頼みまするぞ。』

 金のコウモリの魔女『ソワンボワーズ』は、

 片手をあげて、老人に別れの挨拶を贈り、

 ”禁じられた書”を胸に抱いて、ひらりと箒に飛び乗った。

 ふたりの相棒が、音もなくその後を追った。

更新日:2021-04-23 17:22:16

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