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神々の森

 魔女と『魔法の衿飾り』の出会いは、魔女が10歳のときに遡る。

 幼き日の『ソワンボワーズ』が、

 祖父『天帝』に連れられて

 『魔法の杖』を選ぶため、

 『神々の森』へと出かけたときのことだった。

 その神秘の森で、幼き魔女は、

 最も太古の昔よりその地に生い統べる

 5名の神木の神々と出会った。

 『トネリコの神』『オークの神』

 『ゲッケイジュの神』『ボダイジュの神』

 そして、『ミルラの神』。

 幼き魔女『ソワンボワーズ』が

 自らの『守護神』として選んだのは、

 細身で飄々とした、しなやかな踊りと大地の香りの男神

 『ミルラの神』であった。

 『ミルラの神』は幼き魔女に祝福を与え、

 『ミルラの杖』と『金のコウモリの衿飾り』を授けた。

 1999年11月1日、ソワンボワーズの祖父『天帝』は、

 地上から『宇宙の中心』へと、その居を移した。

 祖父に会えなくなったソワンボワーズは、

 涙に暮れながら、うたたねした。

 うたたねのなかで、ソワンボワーズは、祖父と共に杖を選んだ、

 あの『神々の森』を、ひとりさまよっていた。

 歩き疲れたソワンボワーズがうずくまり、

 祖父を思い出して泣いていると、

 どこからともなく『トネリコの神』と

 『ゲッケイジュの神』が現われ、

 ひとりぼっちのソワンボワーズを、優しく抱擁した。

 『トネリコの男神』と、『ゲッケイジュの女神』は、

 それぞれの木の杖を、ソワンボワーズに授けた。

 そして、『トネリコの神』はソワンボワーズを祝福し、

 『龍の衿飾り』を授けた。

 ソワンボワーズが目を覚ますと、

 『トネリコの神』と『ゲッケイジュの神』は

 あとかたもなく姿を消していたが、

 ふたりの神がそれぞれ授けた杖は、魔女の傍らにあった。

 それゆえ、ソワンボワーズの『魔法の杖』は、3本あるのである。

 そののち幼き魔女は、幾多の苦難を潜り抜けつつも、

 おとなの魔女へとやがて育っていった。
 
 『ミルラの杖』『トネリコの杖』『ゲッケイジュの杖』と

 『金のコウモリの衿飾り』『龍の衿飾り』は、

 常に魔女の傍らにあった。

 そして、ソワンボワーズが自らの『魔女』としての宿命を

 完全に忘れ去ることはなかった。

 しかしながら、真実の『覚醒』が訪れたのは、

 ソワンボワーズが齢40を過ぎたのちであった。

 そして、『伝説の魔女』として知られる彼女が、
 
 数名の友と『魔力』の奥義を極めんがための旅路が、

 2020年の秋、ついに幕を開けたのである。

更新日:2020-12-09 18:41:16

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