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八話 女の子の記憶②「魔術師」


黒色のドット柄のローブをかぶった化け物と言えば
この人だ。

名は不明だ。
なぜなら正体を明らかにしてないからだ。
この魔術師は墓場に現われることが多い。

だから誰かと交渉するときはいつも墓場で待ち合わ
せをする。
なぜ?
かはこの魔術師に聞くほうが早い。


「……誰だ俺の自宅の玄関まえに地縛霊を連れて
来たやつは!」
魔術師はものすごい形相で玄関を上がりキッチンに
向かった。
「お前か!」

息を切らしながら、魔術師が指さす方向には、
ほえ?
とした女性が一人いた。髪はセミロング。
前髪はやや眉のうえ。
素朴な色のワンピースを着た二十歳くらいの人。

「また連れ込んだな!」
魔術師は、まるで女がほかの男でも連れ込んだかの
ように怒り、女に詰め寄った。
「え?」

女は、まだ、ほえ?っと言っている。
「とぼけるなよ、霊が玄関まえにいるぞ!」

「あ!」
女は理解した。
「わたしまた連れて来ちゃいましたか?」

「そうだよ?どうするよ?また仕事が増えたぞ?」
「ご、ごめんなさい!わたしが買い物に行った帰り
について来ちゃったのかな?」

「これで八回目だぞ!俺がだした魔よけくらいつけ
て行けよ、それでなくてもつかれやすい体質なんだ
から!」
「ご、ごめんなさい!」

「あー、もういい。あとで帰しとく」
「ごごめんありがとう」

「いいよ」
少し老け込んだ魔術師。
これから人生の大事なイベントが待ち構えていると
いうのに。

更新日:2020-10-15 10:12:55

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